かつて駅の改札のなかにある店といえば、立ち食いそば屋やキヨスクなどの小さな売店くらいのものだった。ところがいまや「駅ナカビジネス」と呼ばれるほどに店が増え、改札内はすっかり様変わりしている。「駅ナカビジネス」活況の現場には高級スーパーも存在する。成城石井は、全国で5店舗が駅の改札内にある。
朝は通勤・通学客向けのおにぎりやパン、弁当、飲み物などがよく売れ、夕方から夜にかけては、共働きの女性客や妻に買い物を頼まれた男性客が利用する。 特徴は、1000円程度のリーズナブルなものから高級品まで、ワインの品揃えが充実しているところだ。
「仕事が忙しくて、家内の誕生日や結婚記念日にプレゼントを買い忘れても、ここでワインやシャンパンを買って帰ればなんとかセーフ。高級品も揃っているので、慌てて買ったと思われない」(40代・会社員男性)
阪急・夙川駅の同店には、1本6万円近いワインまで並んでいるから驚きだ。
「この駅は、財界人や文化人が多く住む高級住宅地の甲陽園や苦楽園に行く支線への乗り換え駅。取り寄せなども多く高級品を求めるお客様が多いんです」(店員)
それにしても、なぜ「駅でワイン」なのか。駅消費研究センター・加藤肇センター長がいう。
「ワインは重いので、一番最後に買って帰りたい。だから一番自宅に近いということで、意外にも駅はワインが売れる場所なんです」
※週刊ポスト2013年4月12日号