麻生太郎・財務相の肝煎りで2013年度から施行される税制改正大綱に盛り込まれたのが、交際費課税の軽減策、すなわち“接待減税”だ。対象となるのは、日本企業の9割以上(事業所数)を占める中小企業である。
現行の接待交際費は、中小企業(資本金1億円以下)は年600万円まで、支払った額の90%までしか損金に算入できなかった。これが4月からは、景気対策と中小企業を支援する名目で、800万円までの交際費全額が損金算入できることとなった。
この「アソウノミクス」について“現場”はどんな実感を抱いているのか。接待交際費の恩恵にあずかる対象として真っ先に思い浮かぶのは、やはり盛り場のホステスたちである。まずは日本一の繁華街・銀座で聞いてみた。
「アソウノミクス? 聞いたこともないわ。けど、安倍(晋三)さんが首相になってからお客さんは若干増えた。銀座は中小企業の社長さんに支えられているといわれるけど、増えているのはたしかに中小の社長さん。
その代わり、女の子の質は若干落ちてきたかな。銀座は繁盛してくると女の子の数を増やさないといけないから、質が落ちるの(笑い)。交際費で社長さんがもっと来れば、もっと質が落ちるから私にとってはチャンスかも」(高級クラブのホステス32歳)
「最近になって同伴やアフターの数が少し増えたかな。以前よりボトルも空けてくれるようになったし。アソウノミクスは知らないけど、あのゴッドファーザーみたいな格好が似合う人はそうそういないよね(笑い)。いまは経費で飲む人がほとんどいないから、有り難いことじゃない?」(銀座のクラブのホステス30歳)
多くのホステスはアソウノミクスの存在自体知らなかったが、時には客の間で話題になることもあるようだ。赤坂の老舗韓国クラブのホステスはこう話す。
「5~6人で来て30万円以上払っていったマンションディベロッパーのお客さんが麻生さんの話をしていて、『麻生さんは普段から銀座や六本木で飲み代ウン百万円とかポンと払っているから、しみったれた経費枠を変えてくれたんだろう』とか『これからはもっと気軽に来れる。麻生様々だよ』とか話していた。私らもお客さんが景気いいと嬉しいよ。麻生さん、ありがとう」
かつて本誌(2008年6月27日号)は、麻生氏が2004年から2006年の間に銀座や六本木のクラブなどで「政治活動費」として約1682万円も使っていたことをスッパ抜いた。税金(政党助成金)や献金という浄財であり、しかも非課税の政治活動費をクラブ豪遊に使うのはいただけないが、それを政治家の役得とせず、一般のサラリーマンも享受できるようにするというなら、「夜の帝王」麻生氏の面目躍如といえるのではないか。
※週刊ポスト2013年4月12日号