プロ野球が29日に開幕。今年は球史を塗り替えそうな大物ルーキーが数多くプロの世界に飛び込んだ。“流しのブルペンキャッチャー”として全国の名だたるアマチュア選手の球を受けてきた安倍氏は、その中の1人、巨人のドラフト1位・菅野智之についてこう語る。
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大谷、藤浪の存在感が大きくなっているが、実力では彼らを凌駕するほどのルーキーだって今年は何人もいる。その一番手は巨人・菅野智之(23・東海大)。一昨年のドラフトの日本ハム1位指名を袖にして、満を持しての巨人入りである。監督・原辰徳のおいっ子。もうそんな“マクラコトバ”は必要ない。既にそれほどの投手である。
私がボールを受けたのは大学4年の5月。春季リーグ最中の一番いい時だった。恐ろしいボールだった。うなるようにやって来た。いや、ウソだ。あッという間に来るんだから、うなっている暇なんかない。150km出ていた中央大・澤村拓一(現巨人)より速かったから、体感速度で155kmだろう。ミットを構えたらまばたきできない。
最初の1球をバーンとミットの芯で受けたら、菅野が怒った。いや、怒ったように見えた。仁王立ち。マウンドの菅野は顔が怖い。カットボールがなかなか曲がらない。ミットを出しにいったら、そこからキュッと変化して私の右肩を直撃した。痛くなかった。こっちも結構トリップしていたようだ。
幸いにして巨人にはキャッチングの達人、阿部慎之助がついている。ショートバウンドのスライダーやフォークだって思い切り投げられる。他球団なら10勝でも阿部がいるから13勝。きっと涼しい顔で新人王も手に入れることだろう。
※週刊ポスト2013年4月12日号