ビジネス

西武TOB騒動で再浮上の堤義明氏 隠居生活送るドンの胸の内

 かつての“王国のドン”の威光はどこまで通用するのか――。

 筆頭株主の米投資会社サーベラスが仕掛けたTOB(株式公開買い付け)によって、事業再編や新しい経営陣の受け入れを迫られている西武ホールディングス(HD)。

 勝敗の行方は、いまのところ持ち株比率を32.4%から36.4%に引き上げたいサーベラス側に有利というのが大方の見方だ。さらに、「2004年の上場廃止以来、保有株を塩漬けにしていた個人投資家がすべてサーベラス支持に回って株を売れば、45%超まで増える。こうなると経営への関与は免れない」(業界関係者)と、西武にとって分が悪いシナリオが次々と囁かれている。

 そこで、突如「TOBには応じない」と表明したのが、旧コクド会長の堤義明氏(78)である。堤氏といえば、言わずと知れた西武グループの元オーナー。創業者一族として強力なワンマン経営と政界にも顔が利く影響力を誇示し、鉄道事業やホテル事業など一大グループに育て上げた。

 ところが、2004年に有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になり、翌年には西武鉄道株を巡るインサイダー事件で自身も逮捕・起訴、後に有罪判決を受けて失脚。一気に西武王国崩壊の“戦犯”の烙印を押され、めっきり表舞台に姿を見せなくなった。

「経営危機の西武に送り込まれた銀行出身の後藤高志氏(現社長)は、当初、堤氏に気を使って二人三脚で経営の立て直しをする姿勢を見せていたと聞きます。ところが、実際には堤家の持ち株会社だったコクドを分割し、第三者割当増資でサーベラスに出資させるなどして、西武HDを設立。最終的には創業者一族の影響力を排除したのです」(経済ジャーナリスト・松崎隆司氏)

 現在、堤氏が保有する西武HDの持ち株比率は1%未満と見られている。この程度なら堤氏がTOBに応じようが応じまいが何ら大勢に影響は及ぼさないのだが、14.95%と西武HDの2位の主要株主となっているNWコーポレーションは、もとはコクドから分割された堤家の資産管理会社。しかも、同社の大株主がいまだに36%を握る堤氏となれば、事態は少し変わってくる。

「サーベラスがNWコーポの株を合わせることができれば、過半数をゆうに超えて西武の経営権を完全に手中に収めることができます。つまり、堤氏の出方によってはキャスティングボートさえも握れる立場になるのです。いまのところ堤氏はTOBに応じない意向のため、一見すると現在の西武経営陣を支持する形になっていますが、実際は両天秤にかけて成り行きをうかがっているだけでしょう」(前出・松崎氏)

 堤氏にとっては西武の持ち株を急いで手放す必要もないだろう。いずれ再上場すれば高く売れるはずだからだ。それよりも、最後の“切り札”は握りしめたまま、再び現経営陣に自分の影響力を誇示したほうが得策――と考えているのかもしれない。

 では、形勢によっては堤氏が再び西武の経営に関与する場面が訪れるのだろうか。経済誌『月刊BOSS』主幹の関慎夫氏は「その可能性は低い」と見る。

「年齢も年齢ですし、経営の第一線に関わることはないでしょう。それよりも個人の株主、創業家として敬意を持ってほしいというのが本音だと思います。もっと言えば、不採算事業として売却も取りざたされているホテルや球団経営はすべて堤氏の思い入れのある事業。そういう意味では、西武との関係は断ち切らずに口だけは出したいのかもしれません」

「かつての部下や腹心たちも離れ、最近は旧軽井沢で隠居生活を送っていると聞いた」(元西武関係者)との証言も出ていた堤氏。果たして、かつて自分が築いた城を食い荒らすハゲタカやハイエナたちの争いを、どんな思いで見つめているのだろうか。

関連記事

トピックス

再ブレイクを目指すいしだ壱成
《いしだ壱成・独占インタビュー》ダウンタウン・松本人志の“言葉”に涙を流して決意した「役者」での再起
NEWSポストセブン
来春の進路に注目(写真/共同通信社)
悠仁さまの“東大進学”に反対する7000人超の署名を東大総長が“受け取り拒否” 東大は「署名運動について、承知しておりません」とコメント
週刊ポスト
司忍組長も傘下組織組員の「オレオレ詐欺」による使用者責任で訴訟を起こされている(時事通信フォト)
【山口組分裂抗争】神戸山口組・井上邦雄組長の「ボディガード」が電撃引退していた これで初期メンバー13人→3人へ
NEWSポストセブン
『岡田ゆい』名義で活動し脱税していた長嶋未久氏(Instagramより)
《あられもない姿で2億円荒稼ぎ》脱税で刑事告発された40歳女性コスプレイヤーは“過激配信のパイオニア” 大人向けグッズも使って連日配信
NEWSポストセブン
俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン