今年も4月1日に全国各地の企業で入社式が行われた。入社式といえば、偉い人の訓示がつきもの。大企業の社長訓示から、フレッシュマンならぬ中年の我々が学べることはなにか。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が、入社式の社長の訓示から大人としての初心を思い出す・
* * *
街には、明らかに新入社員っぽい若者たちがあふれています。昼時にはスーツ姿が板についていない集団が歩道の真ん中で群れていてちょっと邪魔くさかったりもしますが、初々しさに免じて見逃してあげることにしましょう。
今はすっかりくたびれたりスレてしまったりした中年の我々にも、希望と不安でいっぱいだったああいう頃がありました。せっかくの春、せっかくの新年度ということで、4月1日に行なわれた入社式の社長の訓示から、大人としての初心を思い出しましょう。
まるで決まりになっているのかと思うぐらい、あちこちの社長が言っていたのが「みなさんに、3つの~」というセリフ。丸紅の國分文也社長は「3つのお願い」として「頭でっかちな人間にはならない」「仕事を好きになって欲しい」「初心、忘るべからず」をあげています。阪急阪神エクスプレスの岡藤正策社長も、やはり「3つのお願い」として「何事にも誠実であれ!!」「プロフェッショナルを目指せ!!」「ご両親に感謝の気持ちを伝える!」ということを新入社員に伝えました。
また、JTB首都圏の生田亨社長のメッセージは「感謝しよう!」「自分を成長させよう!」「商品を学ぼう!」の3つ。同じ旅行業界では、日本旅行の丸尾和明社長も「基本を大切にする」「失敗を恐れずにチャレンジする」「目標を持つ」の3つを「ぜひ心がけてほしいこと」としてあげました。まだまだありますが、これ以上並べても似たようなのが増えるだけなので、このぐらいにしておきます。
どれも、新入社員に限らず、すべての社会人にとって大切な教えばかり。4人の社長が新入社員に伝えた「12の教え」のうち、今、自分ができていることはいくつあるでしょうか。中年世代としては、半分以上に堂々と「YES」と言える人は少数派ではないかと推察いたします。自分のことを白状すると、厳しく数えて3つ、甘々で数えても5つがいいとこでした。しかも、心がけているのと実際にできているのとは、また別の話です。
新入社員や若者の前で大きな顔をするために、社長のみなさんの訓示からあらためて学ばせてもらいましょう。もちろん、それぞれのフレーズをじっくり噛みしめることも大切。その上で、社会人のベテランらしく、さらに踏み込んで深く学びたいところです。たとえば、こんな3つの教えを勝手に受け止めてみるのはどうでしょうか。
「社長を務めるにあたって、オリジナリティはたいして必要じゃない」
「現実の社会は、社長のありがたい教えを守れなくてもどうにかなる」
「とにかく3つにまとめると、いいことを言っているように聞こえる」
ああ、これだから中年ってヤツは……。いやいや、拡大解釈、自己正当化、開き直りの3つこそ、中年の得意技であり真骨頂であり、強く生きていくための生活の知恵です!