日本だけでなく、アメリカでも体罰は問題となっているが、ぞの是非については意見が分かれている。在米ジャーナリストの武末幸繁氏が報告する。
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「停学処分は休みを与えるだけで、勉強も遅れる。体罰なら15分で教室に戻れる」
体罰の“効用”についてそう述べたのは、米サウスカロライナ州のカルホーン小学校の校長である。同校では窃盗や喧嘩など「重大な非行」を行なった児童に対し、校長が長さ60cmほどのカヌーのパドル状の板で臀部を3回叩く体罰を行なっている。女児の場合は女性の事務長が行なう。
米国の学校では、生徒への懲罰としてパドルで尻を叩くことは1960年代までごく普通に行なわれていた。現在では首都ワシントンとニューヨーク州など31州が体罰を禁じている(ただし私立まで禁止しているのは2州のみ)。
体罰を容認しているのは前出のサウスカロライナ州など南部を中心とする19州。「臀部を3回まで」パドルで叩くことが認められているアラバマ州・アレキサンダーシティー学校区では、小学生までは長さ約19cm×幅約9cm×厚さ約0.6cmのものを、中高生には長さ約33cm×幅約13cm×厚さ約1cmのものを使う、などパドルのサイズまで厳密に定めている。しかし、それらの州でも体罰に納得しない親が訴訟を起こすことがある。
一昨年、テキサス州・シティビュー高校で男子生徒が問題行動を起こし、副校長からパドルで臀部を叩かれた。病院で手当てを受けるほどのケガをしたため親が苦情を申し立て、州議会で体罰の是非をめぐる公聴会が開かれた(体罰禁止には至らず)。
現在、テキサス州とノースカロライナ州は保護者が個別に体罰を拒否できる制度を導入している。市町村や教育委員会レベルで独自に禁止しているところもある。米教育省によれば、米国での体罰は減少傾向にあり、体罰を受けた生徒の数は1976年の年間約150万人から2006年には同22万人になった。
※SAPIO2013年4月号