「いつやるか。今でしょ!」でブレイク中の東進ハイスクール講師・林修さんの授業は連日、学生で超満員となるというが、学生が予備校を決めるときに重視しているのは講師陣の充実ばかりではない。有名大学の合格実績もバロメーターのひとつだ。ところが、この実績に、ちょっと「?」な数字がある。
大手予備校4校が発表している2012年の東大合格者数を見てほしい。
■駿台予備校 1235名
■河合塾 1184名
■東進 588名
■代々木ゼミナール350名
合計すると3357名。ところが、この年の東大合格者数は3108人。なんと200名以上も実際の数字を上回っているのだ。いったいなぜか?
「各予備校によって、自校の合格者とする基準が異なるためです」
こう話すのは、学力問題および予備校事情に詳しい教育評論家の小宮山博仁さんだ。
例えば、東進では高校3年生時に在籍した現役生のみをカウント。通期で受講した生徒のみを対象とし、短期の講習のみを受けた生徒は含まれていない。ホームページには、「他の大手予備校とは基準が違います」とわざわざ書かれている。実際、他の3校では、講習生をカウントして合格実績として発表している。
「つまり、ひとりの生徒が通期である個人塾の衛星授業に通って、春期や夏期の講習を別の予備校で受講すれば、ダブルでカウントされる可能性がある。とくに地方の学生は、地元の小さな塾に通って、講習だけを大都市の大手予備校で受ける人も多い。また、東進は現役生のみとしていますが、ほかの3校は浪人生もカウントしている点も異なります」(小宮山さん)
各予備校は、この合格者実績を増やそうと必死のようだ。その背景には、予備校間の激しいバトルがある。浪人生がピーク時から半減し、大学受験の現役志向が強まり、市場も縮小傾向に。そんななかでも、大手予備校では小学生を対象にした中学受験部門を強化するなど、各校がしのぎを削る状況は変わっていない。
「予備校によっては、東大合格者実績を増やそうと、東大志望者を対象にした講習に優秀な生徒を招くケースもあると聞きます。東大合格者実績が多ければ、大学進学を予定している高校生だけではなく、中学受験を考える学生にも、大きなアピールポイントになります。地方では北海道大、東北大など、旧帝大の合格実績が多いとそれだけ学生を集めやすくなりますからね」(小宮山さん)