従来の天然ガスと比べて価格が3分の2となる米国産シェールガスの対日輸出が実現しそうだ。この背景にはどんな事情が存在するのか? ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
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2月の日米首脳会談でも議題にのぼった米国産シェールガスの対日輸出解禁問題について、米国政府はこれまでの方針を転換し、輸出容認へ向けて大きく舵を切った模様だ。
米国は、自国産の原油や天然ガスなどのエネルギー資源を高度な戦略物資と位置付け、その輸出については許可制とした上で、これまで原則として認めない方針をとってきた。 唯一とも言える例外規定が、米国との間でFTAを締結している国に対しては輸出を認めるというもの。もちろんFTAを締結していない日本に対しては、この例外規定は適用されない。
「その一方で韓国に対しては、FTA締結国ということで輸出が認められることになった。シェールガスの価格は従来型天然ガスの3分の2程度ですから、韓国経済は大きなアドバンテージを得ることとなる」(経済産業省幹部)
シェールガスの輸入という点で、韓国に一歩後れをとる格好となった日本だが、それでもあと少しで輸出解禁というところまでこぎつけている。それは政府の手柄ではなく、商社勢の頑張りだったと言っていいだろう。たとえば住友商事は、いち早く米テキサス州のシェールガス田開発に出資し、権益を確保している。また三菱商事は、米西海岸に建設された、液化シェールガスの船積み施設を押さえるなど、輸出解禁へ向けた動きを加速させている。
「さらに三菱商事は、カナダ産のシェールガスの輸入を決め、米国に対する一種のデモンストレーションと言えるような動きも見せている」(前出の経産省幹部)
米国政府が対日輸出解禁へ向けて動き出したのも、こうした日系企業の積極的な活動のたまものと言えよう。
「シェールガスに関して言えば、日本の商社からの攻勢はスピーディでアグレッシブだった」(米エネルギー省関係者)
民主党政権下で日米関係が基地問題などによって停滞していたなかでも、民間は政府に頼らず権益の確保に動いていた。
※SAPIO2013年4月号