史上24人目となる大記録を目前で逃したテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有(26)。あと一歩で完全試合を成し遂げるまでに変貌を遂げた理由の一つに、今季からダルの女房役を務めるAJ・ピアジンスキーの存在がある。
36歳のベテランだが、米誌の選手アンケートでは「最も嫌われている選手」や「最も卑劣な選手」などで堂々第1位の称号を持つ問題児。気に入らないとコーチの股間を蹴り上げたり、昨季は球宴に選ばれなかったことに腹を立て、ア・リーグ監督を務めたレ軍のワシントン監督を公然と批判。
オフにはそのレ軍と契約することになったが、根に持ち続け、契約を「ほろ苦い」と表現した暴れん坊だ。
ただ実績は折り紙付き。現役捕手としては最多となる、2度のノーヒッター(完全試合1試合を含む)を経験する幸運男で、今回はその効果が早速現われた形だった。
また、ホワイトソックス時代には高津臣吾の球を受けた経験もあり、日本人との呼吸をわかっていたのも、ダルには追い風となっただろう。
今季はハミルトンやヤングの中軸が抜けて攻撃力が弱体化したのが心配材料だが、米メディアはサイ・ヤング賞の最有力候補にダルの名前を挙げる。
松井が引退し、松坂はマイナー契約。年々日本人選手の影が薄くなりつつある中、ダルの奮闘に期待したい。
■文/古内義明(スポーツジャーナリスト)
※週刊ポスト2013年4月19日号