職業は「自称・エッチなお姉さん」という異色のグラビアアイドル・壇蜜(32)がメディアに引っ張りだこだ。人気の理由は何か。日本人が好む「セクシー」の変遷を追い、壇蜜人気の背景を解析する。
中学時代のあだ名は「愛人」。日本舞踊師範などの資格や葬儀社勤務の経験を持ち、グラビアデビューは29歳と遅い。壇は仏壇、蜜はお供え物の意だという芸名で、昨年後半にバラエティ番組出演をきっかけに大ブレイク。愁いを帯びた表情で「ハァハァしてる?」などと問い掛ける発言や大胆な露出で人気を博し、テレビや雑誌で見ない日はない。
ブレイク前から注目していたというイラストレーターのみうらじゅん氏はこう語る。
「彼女の魅力はセクシーさを見せながら、上品さを失わないところです。過激だけど、ギリギリの上品さを崩さない。非常に巧みな“寸止め”です」
この魅力を「日本人が好む隠微なエロス」だとするのは、『美人論』の著者で風俗史に詳しい井上章一・国際日本文化研究センター教授だ。
「以前、ブラジルに行った時に日本通の方から『なぜ叶姉妹はもっとセックス・シンボルとして人気が出ないのか』と不思議がられたことがあります。ブラジル人の好みはとてもストレート。一方、日本では隠微な味わいのあるエロスの壇蜜さんが人気になるという違いがあるわけです。
また、彼女は時代の波長を掴みました。憂いを帯びた“お妾さん”のイメージで売っていますが、なぜ今ウケるかというと、実際の世界ではもう存在しないものだから。現代では、妾宅に囲われるお妾さんは絶滅危惧種。実際にいないから、壇蜜さんを使った“妄想”で補うのです」
※SAPIO2013年4月号