中国共産党の若手幹部の養成機関ともいえる中国共産主義青年団(共青団)のトップだった陸昊・第一書記がこのほど黒竜江省党委副書記に就任し、地方政治デビューを飾った。すでに、やはり共青団トップだった胡春華・広東省党委書記が習近平主席の引退する10年後に最高指導者に就任するとの下馬評が出ているが、陸昊氏は20年後に胡氏の次の最高指導者に選出されるとの観測が出ている。
陸氏は1985年、18歳で北京大学に入学後、1987年には北京大学学生会主席に選ばれ、1989年に卒業後、北京の国有企業に就職し工場長などを務めた。その際、工場の赤字を解消した経験をもとに書いた「国有企業の赤字解消に関する研究」などの論文が評価され、1998年には「北京市10大傑出青年」に選ばれた。
その当時の朱鎔基首相に見込まれ、中国のシリコンバレーとも呼ばれる北京市中関村地区のトップなどを歴任したあと、北京市副市長に抜擢された。これは陸氏が35歳のときで、直轄市の副市長としては、これまでの最年少の記録を塗り替えた。
その5年後の2008年5月、当時の共青団トップだった胡春華氏のあとを襲って共青団の第一書記に就任した。この経歴から分かるように、いったん共青団組織を出て、国有企業や北京市内の地区幹部などを経て、再び共青団に戻りトップの座に就くというのは、陸昊氏が初めて。
中国共産党の共青団出身の最高幹部は、胡錦濤前主席や現在の李克強首や胡春華広東省党委書記など数多いが、いずれも共青団内の役職を経験し、トップの第一書記に登り詰めたあと、地方に転出するケースがほとんどであり、陸氏のように、大学卒業後、共青団にとどまらずに、国有企業などの役職を経験して、再び共青団に戻るというケースは極めて異例という。
中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は「胡錦濤にしろ、李克強、胡春華ら現在の共青団出身の党幹部は打たれ弱く、窮地に立つと経験不足からくる脆(もろ)さを感じさせるが、陸昊の場合、国有企業や北京市内の地区の幹部、北京市副市長など共青団の純粋培養ではなく、単なるエリートではない政治的なたくましさがある。とはいえ、いずれにしても、今後、地方幹部としてこれらの経験を活かせるかどうかがカギとなるだろう」と分析する。