本誌は今年の注目新人投手について、複数の球団スコアラーの秘蔵メモを拝借した。ここでは大谷翔平の評価と攻略法を紹介しよう。 二刀流について、スコアラーたちは揃って「大谷は打者だと怖い」と語る。
プロの打者として通用するかどうかは、「内角球のさばき方」で判断できるのだという。大谷がデビュー戦で放った2安打は、いずれも上手くヒジをたたみ、ヒザを柔軟に使って振り抜いた内角球だった。
「超高校級のバッティング技術があるのは確か。実は大谷は、キャンプ中から一度もバットを折っていない。これはちゃんと芯で捉えられている証拠。ミートの巧さには天性のものがある」(パ球団のスコアラー・A氏)
大谷の打撃の非凡さを認めるスコアラーたちだが、一方で開幕戦では違うところにも注目していた。別球団のスコアラー・B氏の話。
「対戦した西武の岸孝之が、直球中心の勝負をしてくれた。この結果は、大谷が一軍の球にどれほど対応できるかという意味で、非常に参考になった」
新人の打撃能力がどれほどのものか、プロはときにこうした内角の直球勝負をするものらしい。あの松井秀喜が新人だった1993年5月、ヤクルトの野村克也監督(当時)は、松井を見極めるために守護神・高津臣吾に「全球内角のストレート」を指示。松井はものの見事にライトスタンド中段までかっ飛ばすプロ初本塁打を放った。
その上で、大谷の攻略法は「変化球」と「左投手」。
「インコースの直球は対応できるが、左投手が投げる外角低めのスライダーなどは、まずバットに当たらない。ヒジを畳んで打つのはうまいが、逆にリーチを活かせていない。菊池雄星にまったく合わなかったように、今は左vs左のオーソドックスな攻めで十分」(同前)
投手・大谷はどうか。
「ちょっとしんどいでしょうね。指先がボールの縫い目にきちんとかかった時の直球は、さすがに素晴らしいものがある。しかし、これが5球と続かない。黙って立っていれば四球。それに左足を三塁側に踏み出すクセがあるため、コントロールが安定しない。制球力をつけるには投げ込みが必須だが、二刀流の弊害が早速出ている」(前出・A氏)
※週刊ポスト2013年4月19日号