3月19日、サザビーズ・ニューヨーク本部で行なわれたアジアウィークの初日、オークション会場で行なわれていたのは、器を中心とした中国美術品のオークション。いま中国美術の価格はうなぎ登りだといい、この日も、出品者が数年前にガレージセールで3ドル(当時280円)足らずで買った北宋時代の茶碗が、なんと2万5000ドル(約2億1000万円)で落札された。
経済発展を背景に、この10年ほどの中国人の台頭はめざましい。18世紀以来、世界の美術品オークションを牽引してきたのは、サザビーズとクリスティーズだが、3位のポーリーインターナショナルオークション(北京保利国際拍売有限公司)など上位20社中5社が中国系だ。サザビーズではインターネットカタログに中国語併記を開始、中国語を話すスタッフも増やした。
いまや中国本土には米国を抜いて世界の4割を占める膨大な美術品市場があるともいわれる。サザビーズジャパンの石坂泰章社長はこう話す。
「近年この世界で存在感が強いのは美術新興国でもあるロシア、そして中国です。例えばアジアの現代美術は2004年にサザビーズ香港で3億円規模だったマーケットがいまは200億円を超えるまでに成長しました」
現代美術だけではない。中国富裕層の嗜好は母国の美術品から西洋美術にまで広がりを見せている。かつて中国から持ち出された美術品を母国に買い戻そうという国の政策もあるという。サザビーズの中国美術部門で3本の指に入るスペシャリストも兼任するサザビーズジャパン副社長の平野龍一氏はいう。
「10年ほど前から中国本土の人たちが市場に参加するようになり、中国古美術の金額も以前の10倍を軽く超えるほど値上がりしました。最近の中国人コレクターは投機目的で買い漁るというのではなく、本物志向で目の肥えた人が本当に多いですね」
確かに会場内には若い中国人富裕層が目立った。2日間にわたって行なわれたこのオークションは、エスティメイト(落札予想価格)を上回るものが続出、出品約500点ほとんどが落札され、売上げ総額2271万ドル(約21億円)となった。
撮影■太田真三 取材・文■武末幸繁
※週刊ポスト2013年4月19日号