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自衛隊は軍じゃないから持つのは武器でなく装備と軍事マニア

 防衛大学校の卒業式で、安倍首相は「いまそこにある危機」と訓示した。われら日本人は戦争が起きると思っているのか、いないのか。ミリタリーマニアが集まる秋葉原へ、作家の山藤章一郎氏が向かった。

 * * *
 秋葉原は、〈武器の町〉になっていた。〈軍需品〉をならべる10数店のガンショップに、中学生から勤め人までが押し寄せる。フィギュア、〈AKB48〉、アニメより、ガスマスク、軍服、使用済みの薬莢、モデルガンの〈ガンショップ〉に男たちは熱狂する。

 駅西側の通りの4階〈F〉。そろって、カーキ色のジャンパーに迷彩デイパックを背負った軍事マニアらしき、3人連れの大学生が手榴弾、戦車の模型の陳列棚に食い入っていた。

「今日はつまり、あれですよ。ミクシィのコミュで、オフ会」〈コミュ〉は〈コミュニティ〉。〈オフ会〉とは、ネット上ではなく、オフライン、現実に会うこと。ネットで知り合ったミリタリーオタクの待ち合わせである。

 だがここでは、何も買わなかった。駅南側、万世橋きわに行く。「こっちのほうが品え豊富です」いちばん背の高いのが教える。

 なるほど、エアガンや戦闘服が陳列されているだけではない。大量の古色蒼然とした、かび臭い戦争書籍が積まれている。『大東亜戦争史』『図解・空母機動部隊』『赤軍ゲリラ』背高が『イラク自衛隊「戦闘記」』を手にした。

 自衛隊に興味があるのですかと尋ねてみた。鼻で嗤う。

「あのね、自衛隊は軍ですか? せいぜい災害時の出動が彼らの存在理由でしょ。戦争やる気は、ハナからない。毎日、戦争ごっこをしてるだけですよね。だから、彼らが持っているものは武器とはいわない。装備といいます。日本の武器といえば、第二次大戦までのものです。私は、軍でないものに、興味はありません」

 脇から、丸ボウズが背高の腹をつついた。「おい、これ見てみ。十四年、かっけえだろう。あっ、これもいいじゃん」ボウズは通訳してくれた。〈南部十四年式拳銃〉という。

 その手前の「これもいいじゃん」は、〈二十六年式拳銃〉だった。「十四年は大正で、二十六年は明治ですよ」付け加えて教える。

 このあとで〈ガンダムカフェ〉に入った。男女ともスタッフは全員、〈アムロ・レイ〉などガンダムのキャラコスプレ。ガンダムとはロボットで、〈アムロ〉は、そのパイロット。背高が〈アムロ・レイのパイロットランチ・ハンバーグ〉を食べながらいう。

「石破とか政府は、あおってるけど、戦争なんか起きるわけないですよ。ここにぼくらが来て、アキバをアニメと戦争の町と認識していること自体が、平和ボケの証拠なんです。赤穂浪士は江戸が泰平になって100年ほどの事件です。

 平和ボケには恰好のできごとだからみんな喝采した。戦国時代なら、見向きもしない。武士の心得を説く『葉隠』が流行ったのも、戦いも斬りあいも、なくなったからです。米軍の核の傘に入って、雨に濡れないのが賢いんです」

※週刊ポスト2013年4月19日号

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