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長寿日本一の長野県 ヘルスボランティアの活躍も背後にあり

 ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などに取り組むとともに、震災後は被災地をサポートする活動を行っている。その鎌田氏が、2年後の被災地について語る。

 * * *
 2月末、厚生労働省から日本人の平均寿命が発表された。長野県が男女ともに1位になり、全国一の長寿県になった。

 平均寿命は、5年に1度発表されるが、男性は1990年から連続で1位になり、80.88歳。女性部門はこれまで1位になれなかったが、今回は初の首位獲得で、87.18歳だった。

 1965年、長野県は脳卒中による死亡率が1位だった。そこでまず、減塩運動が行なわれた。野菜を多く摂り、海に囲まれていないが、魚を1日1回、食べるように心がけた。魚は、EPAとかDHAといった脂肪を分解する、体に良い脂が含まれている。それと同様の効果があるオメガ-3という成分を含んだくるみやエゴマ油を摂る努力をした。

 健康で長生きするためには繊維質が大事。キノコやこんにゃく、寒天もよく食べた。

 減塩、野菜やいい脂の摂取。そしてもうひとつ必要なのは、適度の運動だ。これら一連の動きを推し進めたのは、長野県の住民だった保健補導員というヘルスボランティア。彼らが県内全域に配置され、自分たちの地域の健康を守ろうと奮闘した。「ショッカイさん」と呼ばれた婦人たちは、各村で健康にいい食事を指導して回った。

 同時に「歩け歩け運動」が行なわれた。僕が茅野に赴任した1974年頃、この歩け歩け運動に参加した婦人たちは、90歳近くになったが、いまでも仲間と声をかけあって歩いていて、すこぶる健康そうだ。

 最初は脳卒中予防のために血圧を下げようと減塩を始めたが、この減塩が思わぬ効果をもたらした。減塩は胃がんも減らすことが分かってきたのだ。

 血管のために野菜を積極的に摂ったことも幸いした。野菜の色素は血管を老化させるフリーラジカルを抑える効果がある。フリーラジカルががん化を促すことも解明されてきており、野菜を摂るか摂らないかは、長生きできるか、がんで死ぬかの分かれ道でもあったのだ。

 さらには、軽い運動がナチュラルキラー細胞を増やし、がん化するのを防いでくれるということも分かってきた。

 すべての相乗効果で、脳卒中もがんも減ったといえよう。がんの年齢調整死亡率も長野県は男女ともに断トツに低くなった。こうして長野はがん死が少ない県に生まれ変わった。

※週刊ポスト2013年4月19日号

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