「“社会人として魅力ある人間に成長するために保護者にも協力してほしい”という頭取の言葉に、子供を陰ながら支えていこうと実感しました」(出席者の父)。
入社式に新入社員の両親を招く会社がある。静岡銀行グループでは、今年も式典に先立ち両親向けに企業理念の説明と、人事制度や育成についての説明会を開催。5年前から実施しているが、新入行員へのフォローにおいて、両親の理解や協力が得られやすくなったという。後日、両親が配属店へ職場訪問し、支店長と面談を実施するなど就職後も両親との密な関係を大切にしている。
就職活動に関しても、「あくまでも本人の意思が第一だが、両親が社会人の先輩としてアドバイスするなど、一定の関与は必要ではないか」(同行人事担当)と、親の関与にも肯定的だ。
就活を子供にまかせきってはいけない、親がかかわるべきと話すのは『親子で勝つ就活』(東洋経済新報社)の著者、田宮寛之さん。
「今の就活生の両親は子供の数が少ないこともあり、小中学校に入るころから、ずっと人生の選択には関与してきています。3年前の大学受験の段階で、就職を考慮した学校&学部選びをしている家庭も多い。これまで親が進路に関与してきたならば、就職においても親が関与すべきです」(田宮さん)
昔とは社会環境が変化し、親離れ・子離れの時期が遅くなっているのだという。
親に就活を積極的にサポートしてもらったことで、就活早々に内定を得たという渡部くん(仮名)は、こう言う。「自分にはどんな仕事が向いているのかを考えるうえで、最初にやる自己分析を母が手伝ってくれました。小さい頃のことは覚えていなかったので、どんな子供で、どんな経験をしてきたか? 母と一緒に人生を振り返りました。エントリーシート(履歴書)は父にアドバイスや添削を頼みました」
体調の悪い時や、予定が重なっている時、専属運転手のように母親に車で送迎してもらっていた池田さん(仮名)。
「小さい頃のバレエ教室や塾通いのときみたいに、終わる時間に近くで待っていてもらい、次の試験会場まで車で移動しました。待ち時間には車内で、企業のイメージに合わせてメイクの印象を変えたり、食事や仮眠をとったり…。他の学生みたいにカフェで時間を潰すより、断然落ち着けて精神的にも有利だったと思います」
一方で反対意見もある。法政大学キャリアデザイン学部教授で、『「親活」の非ススメ』(徳間書店)の著者、児美川孝一郎さんはこう話す。
「将来の進路について、本来はゆとりのある大学1~2年生の間に親子でじっくり話せばいいこと。就活の時期になって親がしゃしゃり出てくるから、親子関係までおかしくなったという家も多いんです」
バブル期の親の世代は4年制大学進学率が24.8%。現在は50.8%と2倍近くに伸びた。
「親世代の大学生は“上位4分の1のエリート層”。今の大学生は“同世代の過半数を占める大衆”で、大学生の数自体も、バブル世代を上回っています。グローバル化による社会構造の変化や、就職活動スタイルの変貌など、社会変化が急速すぎて、バブル時代の常識はもはや一切通用しません。
それなのにバブル世代の価値観で子供の就活に介入するから、失敗するのです。子供と二人三脚で過ごすのは、例えば20才までなどと決めるべき。そうしないと、次は婚活などとエンドレスです」(児美川さん)。
賛成派の田宮さんも、バブル世代の親の経験だけをもとに子供にアドバイスすれば子供を追い詰めるだけと強く警告する。
「“就職人気ランキング上位の企業は優良企業”“金融機関は安定しているから就職先に最適”“大卒なら上場企業に入社できるはず”“知名度やイメージで会社を判断”“既存の業界以外の新業界には目を向けない”など、古い常識は捨ててください」(田宮さん)
※女性セブン2013年4月25日号