中国で鳥インフルエンザ『H7N9』が猛威をふるっている。中国の報道では、2人が死亡。そのうち、87才の男性は2月19日に発病して3月4日に亡くなっている。しかし、それが発表されたのは3月31日。つまり、死亡から1か月近く経ってからの発表だったわけで、この“空白の1か月”で、ウイルスがすでに日本に上陸している可能性があるというのだ。
日本と中国を行き来する人は年間約500万人超。1か月で実に40万人以上が往来する。さらに中国は4月4日から6日まで「清明節」に伴う3連休だった。この間、約100万人が上海駅を利用するなど、中国各地が多くの人でごった返し、中国人の観光客や邦人の一時帰国などで日本への渡航者は激増していた。
感染症学と公衆衛生学に詳しい医学博士の中原英臣氏が語る。
「これだけ感染源の国と行き来があれば、感染者が日本に入り込んでいても不思議ではありません」
外務省も「清明節による人の移動でウイルス感染が拡大する恐れがある」と注意を喚起しており、現地の日本企業でも対応に追われた。
上海に拠点を持つ家電大手のシャープは「市場では鳥に触ったり近づいたりしない。外出する際はマスクを着用すること」と社員に呼びかけた。中国で幅広く展開するセブン&アイ・ホールディングスでも社員が体調を崩したら速やかな検査を奨励している。
緊迫が増す中で、さらに懸念されるのは、中国当局の情報隠蔽だ。
「今回の鳥インフルエンザ騒動では、中国当局は国内メディアに対し、独自報道を禁止する報道統制を行っています。2003年に新型肺炎SARSが大流行したときも当局は情報を隠蔽し、被害が拡大しました。今回もすでに、報道以上に感染が拡大していることは充分に考えられます。すでに、ウイルスが人から人への感染力を持っている可能性だって否定できないんです」(中国の報道関係者)
仮にウイルスが「人→人」感染に変異していたとしたら、被害規模はどのくらいになるのか。
厚労省は2008年、日本で強毒性の新型インフルエンザが発生したときのシミュレーションを発表している。それによると、人口の4分の1である3200万人が感染し、200万人が入院。死者は最大で64万人に達するという。
これは決して大げさな数字ではない。過去のパンデミックでいえば、1918年に世界中で大流行したスペイン風邪も鳥インフルエンザから変異したもので、このときはなんと世界で6億人が感染し、死者は5000万人に達している。
WHOは、『H7N9型』の治療に既存の抗インフルエンザ薬「タミフル」「リレンザ」が有効であるとの見解を発表し、現在は、予防用の新たなワクチン製造に着手している。しかし、新型ワクチンの製造には半年近くかかる。
「ワクチンが完成するまでは、基本的な予防策を徹底して被害を最小限に食い止めるしかないんです」(前出・中原氏)
予防策は通常のインフルエンザと同じ。
●調理の前後、食事の前、トイレの後は手洗いをする
●肉類はしっかりと加熱してから食べる
●外出時はマスクをする
●外出先から戻ったときは、うがいと手洗いをする
●人ごみを避ける
もしも疑わしい症状が出たら、自己判断せず、すぐに病院で診断してもらおう。
※女性セブン2013年4月25日号