国際情報

中国で「第二次朝鮮戦争」の懸念浮上 情報不足も深刻と識者

 日本の大メディアが伝える大陸と半島の姿は、必ずしも正確ではない。中国で精力的に取材を続けるジャーナリスト・富坂聰氏が現地からレポートする。

 * * *
 緊張感を高める朝鮮半島情勢は、いま中国でも大きな話題である。地元メディアの扱い、は国際情報紙以外が一面で大きく扱うことはないが、どの新聞も連日大きなページを割いてその日の動向を伝え、専門家の解説記事を載せるという力の入れようだ。

 だが、その興味の示し方にはどこか傍観者のような雰囲気が漂うのも特徴である。

 背景にあるのは中国政府周辺に漂う一種の諦観である。いまや北朝鮮が中国の圧力や警告など歯牙にもひっかけないことが明らかになってしまい、中国がプレイヤーとして朝鮮半島情勢に関与しているとの感覚が持てなくなっているためだろう。

 私はかねてから「北朝鮮は中国のコントロール下になどない」といい続けてきた。理由はこのコラムで前に書いた通り、中国が最も北朝鮮の核武装化を警戒してきたにもかかわらずそれを阻止できなかったからだ。

 だがこの考え方は、「中国が本気になれば北朝鮮などイチコロ」という根拠のない思い込みに支配されてきた日本では圧倒的少数派だった。しかし目の前の危機に対して「落ち着いて」と双方に自制を求めるしかない中国の現在の状況は、まさしく「北朝鮮は中国の子分」という日本のパターン思考がいかにズレていたかを証明しているようだ。

 中国は4月の8日から瀋陽軍区で大規模な演習をして北朝鮮をけん制しているが、これもまったく相手にされていない。

 そんななか4月10日付で衝撃的な一つのレポートがネット上で話題となった。筆者は中国共産党の幹部養成機関である中国共産党中央党校国際戦略研究所の張璉瑰教授だ。

 張教授は国務院の対北朝鮮政策のアドバイザーとしても知られる人物である。北朝鮮の金日成綜合大学に4年間学び、帰国後は吉林省で辺境防衛にも従事したという経歴の持ち主でもある。

 その張教授が書いたレポートがネット上に流れた。そのタイトルは〈朝鮮半島で戦争が起きる可能性は80%〉というものだった。北朝鮮の問題で中国からこれほど踏み込んだ分析が出るのは異例のことだ。しかも、対北朝鮮政策に深くかかわる人物の手によって書かれたものだというからなおのことである。

 それにしても、こうした分析を受けて議論が百出している状況を見るにつけ、あらためて中国もさすがに北朝鮮問題では情報不足に悩まされていることがうかがえて興味深い。

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