【マンガ紹介】文/横井周子
年を重ねるごとに女の人生は人それぞれに分かれていく気がします。大人の友情は立場の違いが面白くもあり、ときには自分が選ばなかった道がうらやましく思えることもあり。
マキヒロチ『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)は、実在するお店のすてきな朝ご飯とともに、20代後半の仲良し女友達四人組を描く漫画です。
1巻は東京近辺に住んでいれば思わず足を運びたくなるおいしそうなお店がいっぱいでした。ガイドブック気分でフムフムと楽しんだのですが、2巻では、ストーリーに引き込まれて涙腺が決壊。特に涙が止まらなかったのは、帰省して老いた愛犬みかんと過ごす年越しを描いた『実家と、みかんと。』の回。
仕事に夢中でみかんのことを忘れていた自分を責める麻里子に、母がかける言葉の温かさがじわーっと沁みます。
のんびり屋の息子をつい叱ってばかりの栞に、親の離婚の影響で男性に心を許せないリサ、恋愛体質でフワフワした自分に不安を感じるのりこ。悩みはつきませんが、どの人生にもいいな、と思える魅力があって勇気づけられる一作です。
“大人の女性の友情と生活”といえば、5年ぶりに新刊が出た西村しのぶ『一緒に遭難したいひと』(講談社)も外せません。もはやこの刊行ペースにすら、大人の余裕を感じて憧れます(読者としては、続きはいつも読みたいですけどね!)。
表紙のスレンダーなふたりは親友。ベジタリアンで料理上手な絵衣子と健康無頓着派のキリエです。人生を謳歌しているふたり、ラブ以上にそのキャッキャワイワイが楽しい!
最新巻は台湾茶摘みツアーに、手作りラー油レシピ、リネンのカーテンコレクショントークなど、趣味色全開。さりげなく描かれる洋服の着こなしも眼福です。
タイプの違う絵衣子とキリエがときどき語る、人生で通したい“筋”も素敵です。信条が違っても仲がよく、貯金がなくても毎日を楽しむ。
ゆるゆるっと、でもきっちり貫かれた美学を教えてくれます。
※女性セブン2013年4月25日号