今年2月に『さよなら、韓流』(河出書房新社)という本を出版した、文筆家で女性だけのアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのりさん。韓流スター達にエロティシズムを感じ、欲望の対象として追いかけ続けてきた彼女が、なぜ韓流との決別宣言とも受け取れる本を書いたのか。今回はその2回目です。(聞き手=朴 順梨)
そのほとんどが在日韓国・朝鮮人である「特別永住者」は現在、日本に約38万人しかいない。なのに少しでも韓国に理解を示す姿勢を見せると、途端にネットで「在日認定」をされてしまう。北原さん自身も在日認定されたが、事実に基づいたうえでそれを否定した。だがそれを“嫌韓流”とは違った人たちに批判され、葛藤したことについても同書では触れている。
北原:事実を言うだけで、これだけ叩かれるのかと驚きました。「北原さん、在日なんだってね…」と変に分かったような顔をする、リベラルな人たちもたくさんいた。気持ち悪かったです。その空気こそ差別だと思いました。
在日差別だけではなく、フェミニズムやエロに目を吊り上げたり、韓国に植民地意識を持って上から見下す女たちに対して、「そうじゃないんだ、時代は変わっているんだ」って、「日本に生まれ、日本人として生きてきて、朝鮮半島に偏見を持っていた日本の女」として、語りたかったんです
――『冬のソナタ』が日本で放送されてから今年で10年を迎える。人気は落ち着いた一方で、コンテンツとしての韓流は定番化した側面もある。だがその一方で激しいバッシングにもさらされていることから、日本から本当に「さよなら」してしまうのではないかという声もある。この先韓流は一体、どうなっていくのだろう?
北原:よく「これから韓流はどうなりますか?」と聞かれますが、それは私にもわからない(笑)。日本社会に何かの影響を強く与えたことは事実だけど、それが何かがわかるのは、まだまだ先のことでしょう。でもヨン様が10年前に降臨したことで、日本やアジアの女たちが、いろいろ動いたんじゃないかな。
先日ソウルにSUPER JUNIOR(13人構成の、韓国男性アイドルグループ)のライブを見に行ったんですよ。その時に日本人や台湾人、中国人はもちろんだけど、ブルカ(全身を覆うマント上のヴェール)をまとったイスラムの子や、タイの女の子たちが来ていて、ステージを見ながらキャーキャー言ってたんです。すごい勢いでアジアの女たちが、韓国に向かっているのを実感しました。
女たちが動けば文化も経済もきっと動いていく。それを私は見続けていたいです。どうなっていくのか、私自身が知りたいです。この本を書くまでは韓流は、「自分の欲望の対象」だったけれど、これからは「アジアの女たちを動かすもの」。だから日本の中で叩かれ、男たちが無視したがる韓流とは、確かに「さよなら」。でもこれからの韓流とは、まだまださよならなんて言えない。今はそう思うんですよね。
【北原みのりプロフィール】 1970年生まれ。文筆家、女性のためのアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表。最新刊『さよなら、韓流』(河出書房新社)では、「韓国男性のアレ=9㎝伝説」についての検証もなされている。