中国では連日、PM2.5などの大気汚染や「ガン村」の元凶となる河川の水質汚染など環境汚染が大きなニュースとなっているが、3月の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で再任されたばかりの周生賢・環境保護大臣の罷免を求める署名が習近平・国家主席や李克強首相に提出されたことが分かった。
署名したのは北京や上海市、各省の全人代や中国人民政治協商会議(政協)委員らで、中国政府も環境問題への対応に頭を痛めている。
周氏はこれまで10年間、同大臣を務めており、本来ならば、今回の全人代で辞任するとみられていたが、習近平主席や李克強首相は環境行政に精通している周氏の続投を決めた。少なくとも、今後5年間は同大臣の職を務めるとみられる。
これに反発したのが中国各地の全人代や政協の委員で、連名で周氏の大臣罷免を求める書簡と署名簿を習主席らに送りつけた。
米国を拠点とする中国ニュースウェブサイト「博訊(ボシュン)」によると、書面では「周生賢はこれまで10年以上も中国の環境汚染を悪化させた張本人であり、これほど環境が悪化したのは周生賢が大臣として適切な対策を取ってこず、まったく何もせず、私腹を肥やしてきたからだ」と周氏の無為無策を厳しく糾弾。
そのうえで、書簡は「周氏は本来ならば、環境汚染企業や工場を摘発すべきだったのに、企業などから賄賂をもらい、うやむやにしてきた。そのなかには温家宝首相ら6人の最高幹部のファミリーが絡んだ企業も含まれている」と暴露している。
ある北京市の全人代委員は「この10年来の北京の大気汚染や水質汚染は100倍にも悪化している。もし、北京の米国大使館がPM2.5の汚染状況を明らかにしなければ、環境保護省はいまでも、PM2.5を隠し続けていたに違いない。周生賢が虚偽の数字をねつ造していたからにほかならない」と激しく非難した。
別の委員は「ガンの発症率もこの50年間で最大といわれる。どうしても、周生賢は責任をとらないのだ。周は犯罪者であり、歴史的な極悪人だ」と口を極めて罵倒している。
中国の環境汚染は同省の無為無策もひとつの原因だろうが、1978年以降の改革・開放路線導入で始まった経済発展政策による公害の垂れ流しが主要原因。政府が経済成長を声高に叫ぶあまり、企業に公害防止を義務づけてこなかったという経済重視路線にあるだけに、習近平・李克強体制にとって大きな課題となっている。