いつもながらのお決まりの展開…。わかっていてもつい見てしまう2時間ドラマ。蓄積されたノウハウが視聴者から「あるある」と呼ばれるようになった。
「あるある」最右翼が、断崖絶壁での犯人の告白。ラストシーンはいったいどうして“崖”なのか。
連続ドラマとして絶大な人気を誇る『相棒』(テレビ朝日系)の生みの親で、約20年間、『土曜ワイド劇場』のプロデューサーを務めてきたテレビ朝日ゼネラルプロデューサー・松本基弘さんはこう語る。
「いろいろ挑戦してみましたが、取調室じゃ絵がもたないし、山のなかでも面白くない。ところが海だと、波が常に動いていて表情に変化があるんです。しかも犯人はよっぽど追い詰められた状況でないと話さないわけですから、崖はまさにピッタリの場所なんです」
大いなるマンネリ感も2時間ドラマの味わい深いところ。視聴者からは、こんな声が上がっている。
「『火災調査官・紅蓮次郎』(テレビ朝日系)で船越英一郎(52才)が犯人を指さして言う『火元はお前だ!』。水戸黄門の印籠以上にスカッとします」(44才・パート)
「フジの『浅見光彦』シリーズで、光彦を演じる中村俊介(38才)が必ず容疑者扱いされて、刑事局長の弟だとわかると刑事の態度がコロッと変わる。何回見ても飽きません」(56才・主婦)
放送開始から21年、30回を数える『赤い霊柩車』シリーズ(フジ系)でも、片平なぎさ(53才)と神田正輝(62才)はいまだに婚約中。“いつになったら結婚するの?”とツッコミたくなるが、フジテレビ編成センター編成部の太田大さんはこう話す。
「そこは変えてはいけないかなと思っています。ただ、26作目ではいずれ来るであろう自分たちの結婚式の参考にするためにウエディングサロンを訪れると、そこで事件が起こるというストーリーにしてみました。それと最後は必ず2人で鴨川沿いを歩いて、“あの2人はあそこで歯車が狂った。でも私たちは大丈夫よね”といった事件の総括と自分たちの幸せを確認するやりとりで終わる。その見せ方は変わりません」
悲惨な事件が起こっても、最後はこうしてほのぼのと終わる。視聴者が安心して見ていられるのも、2時間ドラマなればこそだ。
『2時間ドラマあるある』(宝島社)では「テレビ欄の2番目に出てくる俳優が犯人」と書かれている。相棒役がいる場合は、3番目が犯人というのが“定説”。犯人役は出演箇所も多く、キャリアを積んだ俳優が務めることが多いからだが、制作者側はこの点についてはマンネリ打破に工夫をこらしているようだ。
TBSのプロデューサーの森下和清さんはこう語る。
「今の視聴者はすごく目が肥えているので、キャスティングで犯人がわかってしまう。それを裏切る努力はしています。“何番目の大物俳優が犯人だ”とか言われるのは悔しいですから(笑い)。この人は悪そうだけど犯人じゃない、というのを裏切って、やっぱり犯人だったとか。この人は犯人じゃなさそうだけどやっぱり犯人かなとか。視聴者が作った方程式の裏をかく」
※女性セブン2013年4月25日号