かつては死に至る病と恐れられたが、医療技術の急速な進歩によって、がん生存率は年々高まっている。現在、がん患者の5年後生存率は56.9%に達し、部位別では乳がんで8割以上、胃がんや大腸がんで6割以上の患者が、がん発覚から5年以上生きている。
困難な手術を容易にする医療ロボットの開発、新しい抗がん剤の誕生など、医療技術の進歩もめざましく、がん生存率は年々上昇。
つまり、不幸にもがんで亡くなるケースは減少し、むしろがんにかかった後も生き延び、治療を続ける人が増えているのだ。
大阪府立成人病センターがん相談支援センターの田口賀子看護師長が言う。
「がんを告知された患者のかたは気持ちが動転します。医師から話を聞いても、“何が何だかわからない”“何も手につかない”と相談にこられるかたがよくいます。そんな患者のかたに、まず私から話すのは“正しい情報を持ちましょう”ということ。がんの種類にもよりますが、“がん=死”ではなく、平均して20日程度でみなさん退院されます。その後の闘病生活のほうが長く続くんです」
今のがん患者は、告知後にがんとの長いつきあいが待っている。だからこそ、治療でいったいどれくらいのお金がかかるのか、具体的なイメージをつかんでおきたい。
「世の中には“がんは怖くて治療費がかかる”というイメージが氾濫し、具体的な金額が知られないまま不安ばかり先行しています」
と言うのは、『がん保険のカラクリ』(文春新書)の著者でライフネット生命副社長の岩瀬大輔さんだ。それを裏付けるデータがある。がん保険最大手のアメリカンファミリー生命保険会社が2011年、治療費のほか、食事代や交通費も含めた「がん治療全般に関わる費用」を聞いたところ、がんにかかったことがない回答者は、半数以上が治療費用を「300万円程度」ないし「300万円より多い」と予測した。
一方、実際にがん治療を経験した人は、66%が「50万円程度」ないし「100万円程度」と回答。がん未経験者と経験者の間には、大きな認識のギャップがあった。
「食費を含めても50万~100万円程度しかかからないのに、多くの人は“300万円かかる”と誤解しているんです。がんを告知されたら、落ち着いて治療に向き合わなければいけないのに、死への恐怖とお金の不安が重なってパニックになってしまう人もいます」(岩瀬さん)
※女性セブン2013年4月25日号