「最近、鳥インフルエンザ(H7N9型)が話題になっているが、ここで国家上層部が大騒ぎすれば、2003年のSARS(新型肺炎)の二の舞いだ。当時、M国(中国でアメリカを指す美国のこと)は、イラク戦争の開戦に乗じて中国が行動を起こすことを恐れていたので、中国に生物心理兵器を使って国中を混乱させた。M国はまた同じことをしようとしている」
よくあるトンデモ陰謀論かと思いきや、中国版ツイッターの「微博」でつぶやいたのは、中国空軍大佐で国防大学教授の戴旭氏である。中国軍部の高官が、SARS(新型肺炎)も今回の鳥インフルも中国を混乱に陥れるために米国が使用した生物兵器だと断じているのだ。
この書き込みはさらに、「どうせ数人も死なないのだ。中国の交通事故死者の1000分の1にも満たない」と続いていたため、中国国内でも「人命軽視」などと数万件に及ぶ批判コメントの嵐が起き、この部分は削除された。しかし、前半の文面は残されたままで、「米国の攻撃」だとする自説を撤回していない。
もちろん、大佐の発言は何の根拠もない妄想にすぎないが、問題は彼が現役の軍高官だということだ。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は、意図的にこういう暴論を流しているのではないかと指摘する。
「発言統制が敷かれている軍高官の発言だけに、背後に中国政府の意思が隠れていても不思議ではない。中国政府が鳥インフルの蔓延を制御できなくなり、内外から批判にさらされたときに責任をすり替えるため、こんな説を広めている可能性がある。個人の意見として流し、大衆の反応を見ているのかもしれません」
反日デモと同じで、一般大衆の怒りの矛先を政府以外の方向に向けさせるためには何でもするのが中国という国である。
※週刊ポスト2013年4月26日号