「こすったような当たりでも、悠々スタンドインする。統一球になる前と同じような感覚だ」
セ・リーグのある選手が、こう呟いた。飛ばないはずの統一球が、なぜか今年は飛ぶというのである。
確かに、今年は開幕から両リーグで本塁打が量産されている。4月9日現在ではセが42本、パが34本の合計76本。昨年は4月末までで103本だったから、計算するとちょうど倍のペースとなる。
長打が量産される理由は何か。あるセ・リーグ球団の打撃コーチはこう語る。
「統一球の導入時、飛ばない、飛ばないといわれたボールを遠くへ飛ばそうと、力んで打撃フォームを崩す選手が続出した。だけど、統一球も芯を捉えさえすればちゃんと飛ぶ。3年目でようやく、ボールを引きつけてしっかり叩く練習の成果が出てきたということだと思います」
しかし、この「技術向上説」に真っ向から反対するのは広澤克実氏だ。
「技術ではなく、僕は単純に“ボールが変わった”のだと思います。4月5日、マツダスタジアムで鳥谷敬が打った本塁打や、7日、東京ドームでの村田修一の一発のように、逆方向への本塁打が増えている。これは明らかにボールが飛ぶようになったということです。
反発係数が上がっているのだと思いますね。実は昨年の夏頃から、徐々に飛び始めるようになったなと感じていました。何より、打球音が変わりましたからね」
確かに選手たちも、昨シーズンとの違いを揃って口にしている。
「打球音が去年とは違うし、予想外に打球が伸びる」(ヤクルト・畠山和洋)
「打球を追う時の感覚が去年とまったく違う」(ソフトバンク・柳田悠岐)
※週刊ポスト2013年4月26日号