7月の参院選からインターネットを遣った選挙運動が解禁される。経験したことのない変化を前に、永田町では期待と不安が入り交じっている。3か月後の本番に向けて対策に追われる政党や困惑する候補者、事務所スタッフらの動きを、政治評論家の有馬晴海氏が追った。
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民主党では研修会で各事務所に、情報発信の責任者となるCIO(Chief Information Officer)を置くように通達。物々しい肩書だが、実態について民主党関係者はこう語る。
「昨年の総選挙で大量の議員が落選したため、失業した秘書がたくさんいる。そうした元秘書たちがネット担当者として雇われ始めています」
“アベノミクス”が国民より先に失業中の秘書に“雇用創出効果”をもたらした格好だが、CIOらネット担当スタッフは何をしているのか。
「ホームページの管理やFBの開設。あと、民主党議員に対してはネット上で否定的なコメントが出回っていることも多いので、そのチェックも大切な仕事になるでしょう。すでに党内では“ウィキペディアの議員の項目をきちんと修正したほうがいい”という考えが広まりつつあります」(同前)
ウィキペディアは記事編集のルールとして、「自分自身の記事はつくらない」と掲げているのだが……。
一方、ネット選挙を推進する立場の自民党でも長老議員たちの動きは鈍い。「そもそも解禁に賛成ではなかったのだから、対策は党に丸投げしたい」という声まである。党側もそのようなネットリテラシーの低い議員の不用意な発信で本人や党が炎上するリスクを恐れているようだ。
「各議員がネットで発表すべき見解を党がきちんと管理して作っていくべきかもしれない」(自民党関係者)といったスタンス。それでは議員がせっかく個人アカウントでつぶやいたりHPを更新できたりしても、発信される内容は「党の見解」をリライトしただけのものになってしまう。ネット解禁の意味はほとんどない。
党任せの運営や秘書・スタッフによる書き込みでは、日本維新の会の橋下徹・大阪市長のように一般のフォロワーと丁々発止のやり取りで注目を集めることは難しい。一部の若手には本人が積極的に情報発信しようという機運もあるが、それはそれでリスクがある。橋下市長のように問題提起したり反論したりする、ある種の才能がなければ無視されるか“炎上”する可能性が高いからだ。
※SAPIO2013年5月号