安倍晋三首相は「教育再生は経済再生と並ぶ日本国の最重要課題」と位置付け、その教育改革は「アベノミクス」ならぬ「アベデュケーション」(アベ+エデュケーション)と呼ばれている。だが、その効果は懐疑的だと大前研一氏は指摘する、以下は大前氏の解説だ。
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20代30代の「ゆとり世代」や「草食系」社員の多くが「海外で働きたくない」「出世したくない」と思っているわけだが、そういう下向き・内向き・後ろ向きの人材を“量産”している教育こそ、現在の日本の最大の問題だろう。
安倍晋三首相も「教育再生は経済再生と並ぶ日本国の最重要課題」と位置付け、その教育改革は「アベノミクス」ならぬ「アベデュケーション」(アベ+エデュケーション)と一部で呼ばれている。アベデュケーションの司令塔になる政府の「教育再生実行会議」は、いじめ対策や体罰防止、道徳の教科化などを提言し、さらに安倍首相は第二次世界大戦の戦犯を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)史観をはじめとする自虐的歴史教育の改革にも意欲を見せている。
だが、今の日本の場合は、そういった国家による「上から目線」の教育改革ではなく、そもそも各家庭における教育改革が必要だ。安倍首相は、まず「教育憲章」を制定し、その第1条に「子供の教育は親の役割」と明記し、子供が悪いのはすべて親の責任であるということを明確にすべきだ。
いじめ問題にしても、最近になって始まったわけではなく昔からあったことであり、親が子供と平素から十分なコミュニケーションがとれていない、親としての役割を十分果たしきれていないことが悲劇の原因の一つだろう。
新聞やテレビでは、いじめた側もいじめられた側も、たいがい親はいじめに気づいていなかったと報じられるが、親が親としての役割を果たしていたら、自分の子供が学校でいじめに荷担していたり、逆にいじめられたりしていることに気づくと思う。
私自身、子供が学校でいじめられていることを察知し、もう限界だと思ったので別の学校を見つけて転校させた経験がある。もちろん先生と子供、先生と親の対話も成り立っていないのだろうが、それよりも親子の“ノー・コミュニケーション”のほうに根本的な問題がある。
※週刊ポスト2013年4月26日号