アベノミクスの真価が問われる成長戦略はいまだヴェールに包まれている。3本目の矢はどこに突き刺さり、特需分野を生むのか。
成長戦略を策定する「産業競争力会議」は、経済再生の司令塔となる官邸の「日本経済再生本部」の下に設置された会議だ。主要閣僚の他、坂根正弘・コマツ会長、三木谷浩史・楽天社長、新浪剛史・ローソン社長ら10人の民間議員によって構成される。
大まかな方向性は、とりまとめ役である甘利明経済再生担当相が明かした『ターゲティングポリシー(戦略市場創造プラン)』で示されている。「国民の健康寿命を延ばす」「クリーンで経済的なエネルギー需給実現」「安全・便利で経済的な次世代インフラ」「世界を惹きつける地域資源」の4分野を重点的に強化するという。
民間議員の東京大学大学院の橋本和仁教授はその意味をこう解説する。
「今後、4つの大きな分野に国の経営資源を投入することになる。それは“産業界はこの4分野をめざしてください”という政府からのメッセージです。『健康、エネルギー、次世代インフラ、農業・観光』などが国の成長戦略の一つの方向になるということ。個別の政策にどう絞り込んでいくかがこれからの課題です」
1月23日の初会合以降、産業競争力会議は会合を重ね、6月末までに成長戦略を策定する予定だが、その中身といえば「まだほとんど白紙の状態」とジャーナリストの須田慎一郎氏は指摘する。
「これまで安倍政権は金融緩和、財政出動の議論に忙殺されて、成長戦略にまで手が回っていなかったのが実情です。4月以降、やっと成長分野に関する議論が本腰を入れて始められます」(須田氏)
今後、民間議員と関係閣僚らによって開催される、前述の4分野を細分化した7つのテーマ別会合で詳細を詰める。実際に何が成長分野となるのか。須田氏が本命として挙げるのはエネルギー分野だ。
「ともすると絵空事に終始しがちなこの手の会議にあって、最も実現性が高く、注目されているのは太陽光発電。発電量が天候に左右されるなどの課題はあるが、技術はほぼ確立されています。日本には太陽光パネルを製造するメーカーも実際にオペレーションする会社もあり、政府の方向性とも合致することから将来が非常に有望です」
今年3月、愛知・三重県沖の海底から世界で初めてガスの採取に成功したメタンハイドレートも期待される。
※SAPIO2013年5月号