日本では、ハーバードやケンブリッジなど米英の大学教育を崇め奉る傾向があるが、大学教育・グローバル教育で学ぶべきは、実はドイツの制度だと大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
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ドイツの場合、ほとんどすべての大学が国立大学で、日本のような入学試験はない。原則として中学・高校の卒業試験に合格すれば、それが大学の入学資格になって、どこでも好きな大学に入学でき、転校も自由である。だから学生の在学年数や学生の年齢はバラバラで、入学式も卒業式もなく、いわゆる“名門大学”もないのである。
ドイツは青少年による山歩きなどの野外活動「ワンダーフォーゲル」の発祥地だ。もともとの意味は「渡り鳥」で、鳥のように歌いたい、自由でありたいという願いが込められている。つまり、青春時代の教育で最も大切なのは、渡り鳥のように彷徨うことなのだ。
人生とは何なのか? 自分はどういう人生を生きたいのか? 何で飯を食うのか? それを探して見つける旅をするのが大学時代なのである。
その一方で、ドイツはギルド制の名残で現在も職業意識が非常に高いため、高校卒業者の5割くらいは大学ではなくマイスタースクール(職業訓練専門学校)に進んで手に職をつける。だからドイツの人材は、おしなべて優秀なのである。
※週刊ポスト2013年4月26日号