資産運用や人生設計についての多数の著書を持つ作家・橘玲氏が、世界経済の見えない構造的問題を読み解く『マネーポスト』の連載「セカイの仕組み」。アベノミクスが最悪シナリオの財政破綻に向かった場合、【1】金利の上昇、【2】円安(通貨の下落)、【3】インフレという3つのリスクが想定されるが、ここでは「円安」について解説する。
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財政破綻で超円安を予想するひとが多いとしても、実際になにが起きるかはそのときになってみないとわからない。
日本の対外純資産は民間だけで180兆円以上あり、国内金利が上昇すれば海外資産を売却して円に戻す動きが広がるだろう。金利の上昇で海外投資家が日本国債に投資し、それが円高につながるかもしれない。
ただし、為替レートは長期的にはインフレ率と金利差を調整するように動くから、高金利の通貨はいずれは安くなる。この“市場原理”がはたらいて、日本経済の高金利/インフレが定着すれば為替レートは円安に向かうことになるだろう。
為替の水準は、金利の上昇とインフレがどこまで進むかによる。円の為替レートというのは日本円と外国通貨を交換する際のたんなる換算の道具だから、ハイパーインフレのような極端な事態を想定すれば、1ドル=500円や1000円になってもおかしくはない。歴史上、通貨の価値が10分の1や100分の1になることはけっして珍しくはないのだ。
【プロフィール】
●たちばな・あきら:1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』など著書多数。財政破綻に備える資産運用の詳細は新刊『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』を参照。
(連載「セカイの仕組み」より抜粋)
※マネーポスト2013年春号