2015年1月から相続税が改正されるが、仕組みが複雑で誤解しているケースも多い。よくある誤解は、相続税の増税で、遺産の半分くらいとられる? との心配だ。
例えば70代の男性Aさんは、つい最近、妻を亡くし、現在はひとり暮らしだ。5000万円ほどの預金の使い道は特になく、子供2人に仲よく遺産を分けてあげたい、と考えている。だが、再来年1月以降、相続税の最高税率が50%から55%に上がると聞き、落胆した。
「ろくに贅沢もしないで貯めてきたわしの預金が、半分以上税金で持っていかれるのか…」(Aさん)
もらう側としても、親が貯めた財産を国にごっそり取られてしまうのは悔しい話だ。今回の増税で、もらえる金額は実際にどのぐらい減ってしまうのだろうか? 『モメない相続』(朝日新書刊)の著者で弁護士の長谷川裕雅さんはこう解説する。
「そもそも相続税がかかってくるのは、基礎控除を引いて残った部分のみです。つまり、Aさんのケースでは、相続人が2人なので基礎控除は4200万円。この金額を超えた部分に税金がかかるだけです。
しかも、超えた金額によって税率は異なっており、1000万円までは10%、3000万円以下は15%で済むのです。今回、増税となるのは、課税される部分が1億円を超える人だけで、1億円以下までは現行の税率と同じ。最高税率の55%となるのは課税される部分が6億円を超える場合です」
つまり、相当な資産家でなければ、今回の増税はまったく気にしなくていいということになる。
Aさんのケースでは、課税されるのは「5000万円-4200万円=800万円」だけ。しかも、相続税はその10%なので、80万円ですむ。
※女性セブン2013年5月2日号