安田清人氏は1968年、福島県生まれ。月刊誌『歴史読本』編集者を経て、現在は編集プロダクション三猿舎代表。共著に『名家老とダメ家老』『世界の宗教 知れば知るほど』『時代考証学ことはじめ』など。BS11『歴史のもしも』の番組構成&司会を務めるなど、歴史に関わる仕事ならなんでもこなす安田氏が、大河ドラマの“時代考証”について解説する。
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約40年間続いた〈水戸黄門〉が終了してから早2年。時代劇退潮のなか、歴史を描くTVドラマとして孤塁を守るのがNHK大河ドラマだ。昭和38年に第一作〈花の生涯〉が放送開始。現在、放送中の〈八重の桜〉が52作目となる「国民的ドラマ」の名に相応しい番組だ。
その大河ドラマだが、近年、「時代考証」が話題に上ることが少なくない。史実との違いやリアリティの欠如を指摘し、時代考証がなっていないのではないか、との批判がメディアで語られるのをしばしば目にする。時代考証は本当にダメになってしまったのだろうか。
そもそも時代考証とはなにか。大河ドラマで初めてスタッフ・クレジットに〈時代考証〉が記されるようになったのは第5作目の『三姉妹』(昭和42年)。その後、時代考証、あるいは監修として、歴史学者や時代考証家と呼ばれる人たちの名前が記されるようになり、近年は風俗考証、建築考証、衣装考証といった個別の「考証」も登場。時代考証の細分化が進んでいる。
時代考証の仕事は大雑把にまとめると、次のようになる。まずシナリオのチェック。歴史上の出来事や実在の人物の行動や考えなどが事実に反していないかどうかを洗い出し、さらにはセリフや所作、あるいはナレーションにいたるまで、時代にそぐわない表現があれば訂正する。
そして撮影に入ってから現場からあがってくる疑問や質問に答えるのも、「考証」の仕事となる。大河ドラマにおける時代考証とは、歴史を映像表現として描くための「お墨付き」を与える作業と言えるだろう。
※週刊ポスト2013年4月26日号