ユニークなご当地キャラ、“ゆるキャラ”がブームだが、今や日本一の人気キャラといえば、熊本県のくまモンだ。
くまモンが“経済効果293億円”までになった背景には、県庁ブランド推進課による「損して得取れ」という戦略があった。通常、キャラクターを商品化する際は、イラストやロゴなどの商標を使うために利用料を払う必要がある。
例えば、滋賀県彦根市のひこにゃんの場合、売り上げの3%を利用料として支払う必要があり、愛媛県今治市のバリィさんも基本的には有料だ。
しかしくまモンの場合は、申請して許可が下りれば、お金はかからない。この“利用料フリー”により、経済効果が増大してきた。
許可の条件は、「熊本県のPRにつながるか、県産品のPR促進につながる」こと。県内特産品や県内の企業・事業者はもちろん、熊本とは関係ない商品でも、「熊本県産の材料を使っている」ならOKなど、対象は幅広い。
これまでの利用申請の許諾件数は、今年3月末まで9353件。1万件を超える日もそう遠くない。熊本県庁くまもとブランド推進課課長の成尾雅貴さんはこう語る。
「確かに、利用料を取れば、その分収入も増えるわけで、もったいないと言うかたもいます。でも県としては、最初から無料と考えていました。織田信長の“楽市楽座”を手本に、“誰でも自由に商売してもらい、経済を活性化させる”ことにしたんです。
くまモンが“ブランド”として認められれば、商品化された企業はうるおい、熊本県は熊本の良さを全国にPRしていただける。双方に利益が出る“ウィンウィンの関係”です。私たち、結果として熊本のみなさんが幸せになればいいんです」
前述のとおり、昨年の関連商品の総売り上げは293億円だが、これはあくまで推進課のアンケートに答えた55%の企業の売り上げを集計したもの。残り45%を考えると、実は500億円以上になっている可能性だってあるのだ。
実際に、くまモンの恩恵に預かる人は、県内に大勢いる。
例えば、くまモンの使用許可1号を得た、市内の輪島漆器仏壇店。店内に入ると、純金の装飾を施した73万5000円のくまモン仏壇をはじめ、15種類以上のくまモン仏具が並ぶ。くまモン仏壇見たさの孫に連れられて来店する祖父母世代が増え、50万円もする仏壇(さすがに“くまモン仕様”ではない)を購入していったことも一度や二度ではない。それで、売り上げは前年比1.5倍に増えた。
「最初、利用申請に行ったときは、“くまモンと仏壇ですか?”と県庁でも頭を抱えられました(笑い)。実はそのときに作ったくまモン仏壇は今も売れていませんが、それでいいんです。当時、県外から進出してきた大手仏壇店によって、うちは売り上げが半分以下になる苦しい状況でした。
それが、むぞらしかな(かわいい)くまモンに出会え、申請第1号業者ということでメディアからも注目され、業績はV字回復。本当に、私たちにとっては大切な子なんです」(社長・永田幸喜さん)
※女性セブン2013年5月2日号