右肩上がりの経済成長を続ける中国だが、足元にはまだまだ多くの問題が山積している。ジャーナリスト・富坂聰氏のレポートである。
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4月10日、中国のニセモノ市場が相変わらず盛況であることを証明するような記事が国内で一斉に報じられた。
一つの話題は、午前中に開かれた会見で北京市が知的財産保護の状況について報告した数字だった。北京といえば、各所にコピーブランドショップがあり、「本物そっくり」の商品から「本物の横流し品」まで手広く扱われ、なかにはビル一つすべてコピー商品というケースも見つかるほどだ。
会見では、2012年に北京市が摘発した事案について細かい報告もなされたのだが、目立ったのは服飾の世界ブランドに対する知産侵害だった。その数なんと1729件、金額にして3億元(約48億円)にも達したというのだ。
まさに「ニセモノ天国」の名に恥じない結果だが、それでも実情はそんな小さなものではないという意見がほとんどだ。
「やはり主力はネットでしょうからね。ネット界では、イージーオーダー方式というのがあって、ファッション誌のなかでモデルが着ている衣装を真似て販売するビジネスが大繁盛なのです。もちろんブランドであろうとなかろうと全く関係ありませんからね……」(北京市の夕刊紙記者)
コピー商品に限らず中国ではいまネットショッピングが花盛りで、大きなビジネスになっているという。4月13日付『北京青年報』には、ネット通販の「淘宝網」だけでも〈服飾モデルとして活躍する人が3万7000人に達し、稼ぎ頭は1日に五万元(約80万円)も稼いでいる〉という記事も踊った。
また一方、食品安全に対する心配はいまだ中国の消費者にとって頭の痛い問題であることを証明するような記事も見つかる。
やはり4月10日付『法制晩報』には、〈第1四半期に中国が輸入した粉ミルクが24万トンに達した〉との記事が掲載され、相変わらず国内の牛乳に対する不信感が根強いことを知らしめたのだ。
粉ミルクは、こうした正規のルート以外にも運び屋が手荷物で持ち込むケースも多く、買い出し先となった香港では「地元の母親たちが、子供に与える粉ミルクが手に入らないほど買い占められた」とクレームを当局によせる騒ぎとなった。
この問題は中国の全国人民代表大会にも持ち込まれ、最終的に1人2缶までしか持ち込めないとの制限をつけることで解決を図ったのだった。