これまで謎に包まれていた中国の習近平国家主席の個人秘書の存在が初めて明らかになった。習主席は国家主席のほか、中国共産党総書記、さらに中央軍事委員会主席の3つの大権を握るだけに、その秘書の権力も絶大となる。
毛沢東主席やトウ小平氏、江沢民氏、胡錦濤氏ら歴代の最高指導者の秘書経験者はほとんど例外なく軍や党の要職を務めており、最高幹部への登竜門とされるだけに、習氏の秘書の一挙手一投足にも注目が集まっている。米国を拠点とする中国情報専門ウェブサイト「多維新聞網」が報じた。
その人物は名門、北京大学出身の朱国峰氏で、正確な年齢は不明だが、1970年代生まれで40代とみられる。
朱氏が習主席の秘書と確認されたのは、4月初旬に中国海南省の博鰲(ボアオ)で開かれた「博鰲アジアフォーラム」で、習主席がフィンランド大統領と会談した際、中国側の出席者のなかに「ZHU GUOFENG/ SeCretAry To PresiDent Xi jinping(朱国峰/習近平主席秘書)」とのプレートが置かれていた人物がいたからだ。
ダークスーツに黒色系統のネクタイを締め、大きな黒縁眼鏡をかけた能吏風の人物が朱氏で、習主席の秘書であることが初めて明らかにされたのだ。
主席の個人秘書は基本的に「平の党員」で、それほど目立たないが、最高指導者の一番身近な人物であることは間違いなく、各方面からのさまざまな誘惑も多く、その存在は通常、公にはされていない。
ただ、側近中の側近であり、最高指導者の行動をチェックしていけば、必ず身近にいるだけに、それほど時間も経たずに、その存在は明らかになってきた。
トウ小平氏の個人秘書だった王瑞林氏は軍の最高幹部の一人となり、江沢民氏の秘書の賈廷安氏は現在、解放軍総政治部副主任を務めている。胡錦濤氏の秘書、陳世炬氏は今年3月下旬、党務をつかさどる党中央弁公庁の副主任に就任していたことが分かっている。これは習主席のグループの番頭的な存在である栗戦書・党中央弁公庁主任を補佐する重要なポストだ。
朱氏の個人的な経歴はほとんど分かっていないが、中国情勢に詳しく『習近平の正体』(小学館刊)との著書もある相馬勝氏は「朱氏が今後数年間、習主席の秘書を務めていけば、党務のほか、軍務にも精通し、中国のトップシークレットを知る立場になる。平の党員ではあるが、朱氏の動向を丹念にフォローしていけば、中国政治の変化が透けて見えてくるのではないか」と指摘している。