男の前に立ちはだかる壁、EDの原因はどこにあるのか、どんな治療法があるのか、あらゆる角度から取材した著書『男の壁 ED1130万人時代を生きる』(幻冬舎・1365円)を上梓した工藤美代子さん(63才)。
工藤さんが、性をテーマに執筆するようになったのは、女性の更年期の悩みに直面したことがきっかけだ。
「私自身は、加齢で起こる生理的変化は自然にまかせるしかない、という受け止め方なのですが、ホルモンのバランスがくずれることで体調が悪化したり、閉経後に性交痛を訴えるなど、女性の悲痛な声をたくさん聞いたことが、そもそもの始まりなんです」(工藤さん・以下「」内同)
さまざまな悩みの中には、「相手の男性がED(勃起不全)でセックスができない」という声も少なくなかった。
そこで、周囲の男性に話を聞くと、「この年になっても自分はセックスができる」といった自慢話は出るのに、悩みには口をつぐむ。例外的に答えてくれた男性は、「あるとき妻が真っ白いスリップを着ていた。それが母親を思い出させて、そのときからEDになってしまった」と打ち明けた。
「そんなに男の人って繊細なの!」という思いで調べていくと、日本のED患者は医療機関を訪れた人だけで1130万という数にぶつかり、深刻な問題だと知る。同時に男性だけの悩みではないことも知らされる。
「パートナーとセックスができないとなると、女性は、私に魅力がないから? 私のことが嫌い? 私以外の女性とならセックスできるの?と考えてしまうんですね」
こうした悩みを解消する一助になればと、専門医や性産業などの取材を開始した著者に、思いもよらないところから反対の声が上がる。
「それまでどんなときも私の仕事のよき理解者だった主人が、“そんな取材、そんなテーマはやめろ。おれが恥ずかしい”って(笑い)」
そんな声もあり、国内だけでなく、海外にも目を向けることにしたという。
ED治療先進都市である韓国・ソウル、バイアグラが飛ぶように売れるという台湾・台北など、身近な外国の街のもうひとつの顔が、本書の中に鮮やかに表れる。あの手この手でEDを克服しようとしたり、必死で快楽を追求するエネルギーのすごさ。深刻で真剣だけど、どこかおかしくもある人間の姿。とくに女性には、普段うかがい知ることができない、男の性の話なので、興味が尽きない。
しかし、どうも男性にはこの本の評判がよくない、と著者は笑う。
「男性からは“よく書いてくれた”の一言もありません。それどころか、さる男性作家とこの本について対談することになったんですが、最初、快く引き受けてくださったのにもかかわらず、EDがテーマだとわかると、なぜか不機嫌になって断ってきたんですよ。
主人は執筆に反対しただけではありません。私のほかの著作は書棚にきれいに並べてくれるのに、この本だけは見向きもしない。まま子扱いです(笑い)。EDって、男の人にとって触れてほしくない部分なんでしょうか…」
※女性セブン2013年5月2日号