みずからオンライン大学「BBT(ビジネス・ブレークスルー)大学・大学院を学長として運営する大前研一氏は、内向き・下向き・後ろ向きになった日本の若者を変えるには、大学教育を変えるべきだという。その大前氏が注目する、日本の大学発SNSを紹介する。
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政府・文部科学省や各大学でも、グローバル教育を今後の改革の柱にしている。だが結局、東京大学のように「秋始業や秋入学の検討」「推薦入試の導入」といった小手先の修正に終始している。これでは日本の大学は、学ぶためではなく卒業・就職を目的に入学するという現状から脱却できない。要は、文科省も大学も「どういう人材をつくるのか」というイメージがきちんと描けていないのだ。
そんな中で私が注目しているのが「すごい時間割」というSNSだ。
これは慶應義塾大学在学中の鶴田浩之氏が設立したインターネットサービス会社Labitが運営している大学生のためのソーシャル時間割サービス(大学の友人、サークル、ゼミで時間割を共有するアプリ)で、2013年4月15日現在、対応大学・短大数は全国1114校、登録授業数は66万件余り、利用ユーザー数は約15万人に達し、学生たちは大学を超えた情報交換だけでなく、先生のレーティングまで始めている。
学生たちが自分の大学だけでなく、レーティングの高い“よい先生”を求めて複数の大学を行き来するようになったら、まさにワンダーフォーゲル(渡り鳥)だ。そこに私の持論である「教育バウチャー制度(※文科省が学校に出している補助金などをバウチャーとして親に戻し、学校の選択を親と子供に委ねる制度)」を導入すれば、ドイツの大学のように学生は自由に大学や講義を選んで移動できる。
そうなると、質の高い授業を提供できない大学や教授は学生に淘汰されてしまうから、必死になってカリキュラムを磨いていくだろう。
現在、日本の短大・大学・大学院の学生数は約300万人だ。今後も「すごい時間割」を利用する学生やオンライン大学で自由に学ぶ学生が増えていけば、自らは改革できない教授たちや文科省を超え、大学教育を根本的に改革する力を持ち得るかもしれない。
そんな学生たちが、いずれ日本と日本企業を生まれ変わらせる起爆剤になることを私は期待している。
※週刊ポスト2013年5月3・10日号