IT市場専門のリサーチ会社・MM総研のスマホ市場規模調査によると、2016年度末には携帯使用者の67.3%がスマホになると予測されている。街の至る所で目にする、歩きながらスマホを使う“危険人物”たちに遭遇する可能性は、今後ますます増えそうだ。
「歩きスマホ」が危ないことは、科学的にも立証されている。首都大学東京の樋口貴広准教授(認知科学)は、「歩きスマホは非注意性盲の危険性をはらんでいる」と指摘する。
非注意性盲とは、あることに意識を集中しているとそれ以外の視覚情報に鈍感になることである。
樋口氏は、歩行者の通路上に、前を横切る他の歩行者に見立てた引き戸式のドアを設置。タイミングや速度を変えて開閉させた際によけられるかを、普通に歩く場合とスマホを使用しながらの場合で実験した。
その結果、普通の歩行者は全てのパターンで接触を回避。しかし、スマホ使用者の10~20%は、接触してしまうか、接触ギリギリの所にならないと回避できなかった。
「特に、ドアがゆっくりスライドした時ほど気付かない傾向がありました。つまり、スマホを使いながら歩いている人は、高齢者や障害者など、歩行速度が遅い人に気付きにくい」(樋口氏)
さらに、日本大学理工学部の島崎敏一教授(交通計画)が都内を路上観察した調査でも、携帯使用中の歩行者の歩き方には、ある特徴が顕著だという。
「歩行速度が落ち、ただ真っ直ぐ歩きます。画面に気を取られて他の歩行者を意識することがなくなっている状態です。安全に注意が必要な横断歩道よりも、危険が少ないと考えられる一般の路上の方が、こうした傾向がより強くなります」
※週刊ポスト2013年5月3・10日号