3月末、産経新聞で米デンバー日本総領事館を舞台にした情報漏えい事件が報じられた。記事によると、2010年頃、米デンバー日本総領事館の久保和朗・総領事(当時)が韓国情報当局に近い韓国人フィクサーX氏らを公邸に招いて宴席を重ねた結果、機密情報が漏洩した疑いがあるという。日本の外務省は「深刻な情報漏洩や不正経理はなかった」として騒動の火消しに走った。
週刊ポストが、現地取材を進めると、さらに深刻な事態が判明。X氏が、すでに退職した久保前総領事だけでなく、現職の大野郁彦・総領事とも交際していたという疑惑が浮上したのだ。
週刊ポスト2013年4月26日は、X氏が12年3月、大野氏を食事に招待していたと報じた。実は、その席には米政府の超大物も招待されていた。現在、デンバー大学部長を務めるクリストファー・ヒル元国務次官補である。ヒル氏といえば2005年、北朝鮮の核問題を議題にした六か国協議でアメリカ首席代表を務め、北朝鮮寄りの対応をした人物として知られる。
共和党タカ派のパーティーにも顔を出し、北朝鮮に近いハト派のヒル氏とも関係を持つ。X氏の“幅広い”交際関係はアメリカの諜報機関が興味を持って当然ともいえる。週刊ポスト報道を受け、日本の公安関係者も情報収集に動き出した。
「もし本当にデンバー総領事と接触があるとすれば、情報管理の観点から、由々しき問題だ。X氏は朝鮮半島発祥の新興宗教団体に近い。また、日本の有名俳優とも交際があり、一緒に写っている写真もある」(公安関係者)
X氏に直接話を聞いた。
──大野総領事を2012年春に食事に招待したのは事実か。
「本当ですよ。日本料理店に招待しました。大野さんとは3~4回、食事などでお会いしています。誘われたり、誘ったりして。(前職の)久保さんには5~6回、公邸に招待されています。大野さんとはこれからも会う機会があるでしょう」
──なぜ日本の総領事に会うのか。
「デンバーには韓国人が30万人住んでいます。私はデンバーで成功した、韓国人社会のゴッド・ファーザー。久保さんや大野さんが私に会うのは、デンバーの名士の私から有益な情報を引き出そうとしてのものでしょう。友好関係です。ビジネスの話はしませんよ」
──久保前総領事の公邸で一緒にいた、韓国人エージェント2人とはどういう関係か。
「彼らはデンバーの韓国系メディアの記者や関係者。諜報員ではありません」
最後に、米国情報当局がX氏を「北朝鮮のエージェント」と見て監視活動をしていることについて問うと、一瞬の間の後、笑いながら「私はコミュニストが大嫌いです。おもしろいことをいいますね」と答えた。
朝鮮半島有事前夜ともいえる今日、安倍政権がこの問題を放置するなら危機意識が足りないという他ない。
※週刊ポスト2013年5月3・10日号