スポンサー収入の落ち込みから、制作費削減が続くテレビ業界で増産されているのが、「生放送のトーク番組」である。ギャラの安い“ひな壇芸人”などを使い、簡単な番組の流れだけを書いた台本を用意して、後は出演者にアドリブで話をさせるのだ。
「通常、番組を1分編集するには1時間の編集作業が必要といわれます。その時間や人件費に加え、録画編集には、機材やスタジオ代も加わって、1時間番組の制作にざっと100万円がかかる。生放送にすれば、この制作費が浮くので、非常にありがたい。特に最近は、関西の準キー局制作のものにこうした番組が多いですね」(放送関係者)
ところが、安いからといっていいことばかりではない。当然、生放送では失言などの「放送事故」が起こりやすいのだ。これを避けるため、テレビ局はある方策をとっている。
「実際の時間から、オンエアを10秒遅らせる方法です。10秒あれば、失言があった場合でも、その間に該当部分を“ピー音”で自主規制することができる。島田紳助さんのような、歯に衣着せぬ発言が売りのタレントが出ている場合で10秒。それ以外の“安全”そうなタレントでも、5秒遅らせるケースがあります。
下ネタは謝ったら済む場合が多いが、差別用語や政治的に偏った発言は絶対に許されないため、各局は神経を遣う。特に右翼や暴力団などが絡むようなものは、未然に防ぐ必要がある」(同前)
録画にしたがらない理由はもう一つある。
「録画は、責任の所在が局側にあるとハッキリしてしまうんです。最近は、どんな発言・行動から“炎上”するかがわからない。それに現場の人間も、10秒の編集をした上での事故となってしまった場合には、“できることはやった”と言い訳がしやすい。大問題になれば、最悪、タレントの責任にすればいいんですから」(番組制作プロダクション)
とにかく頭にあるのは、テレビ局の「保身」である。
※週刊ポスト2013年5月3・10日号