漫画家の一条ゆかりさんは、『砂の城』や『デザイナー』といったシリアスな作品から、コメディタッチな『有閑倶楽部』まで、数々のヒット作を世に送り出してきた人気漫画家。そんな一条さんが漫画研究家の藤本由香里さんと対談し、デビュー前後の心境についてこう語っている。
藤本:デビュー前はどんな少女漫画誌をお読みになっていましたか?
一条:『少女フレンド』(講談社)は毎号読んでいましたね。
藤本:というと里中満智子さんがデビューされるころ?
一条:里中さんは16才でデビューされたんですけど、15才の私は、“ひとつ上の人がデビュー…キリキリキリ!”とあせっていました。そしたら美内すずえさんもデビューして、“きゃー同い年!”。大和和紀さんもひとつ年上でしたね。早いデビューが当たり前の時代だったので、いつもイラだってました。
藤本:大和さんといえばはいからさんが通る(1975年)やあさきゆめみし(1979年)。時代を決めて、その時代、時代を象徴する主人公を描く作品が多いですよね。
一条:大和さんは調べる作業がすっごい好きなんだって。それを練って練って練りまくって描くから、ストーリーにブレがないの。
藤本:先生はいつごろから絵を描いてらしたんですか?
一条:小学校低学年のころから。大人っぽい絵が好きでしたね。
藤本:じゃ、わたなべまさこさんもお好きでした?
一条:ガラスの城(1969年)は怖かったけど夢中で読みましたよ。あの登場人物の怨念のような執念のような、白蛇のような妖艶な迫力にやられました。
藤本:聖ロザリンド(1973年)もそうですよね。怖いー!
一条:まさこ先生を初めてお見かけしたのは、出版社での打ち合わせの帰り。むっちゃエレガントなカナリア色のコートを着て、パリモードの重鎮のような佇まい。なんなんだろう、あの人は!と思ったらわたなべまさこ先生。ご自身の描く漫画にすごい似ているの!
※女性セブン2013年5月9・16日号