衣料ブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、「世界統一賃金構想」を練っていると報じられ(朝日新聞4月23日付)、反響を呼んでいる。世界統一賃金の仕組みとはどんなものなのか。改めて整理しておこう。
現在、ユニクロの「グローバル総合職」社員は世界に約5000人いる。すでに執行役員や上級幹部ら合わせて51人の上位7段階は世界で「完全同一賃金」になっている。完全同一賃金とは、たとえば、日本円で年収5000万円のグレードに属する海外採用社員は、通貨や物価が違っても、その額に相当する年収を受け取ることができるというものだ。それをさらに下位のグレードにも広げていこうというのが、今回のユニクロの構想である。
企業の人事事情に詳しい西山昭彦・一橋大学特任教授によれば、ユニクロのような製造小売業でその仕組みが導入されれば、非常に先進的なことだという。
「海外の金融会社や経営コンサルタント会社では珍しいことではない。ただし、それらの企業は少数精鋭で、社員の多くが個人で巨額の収益を上げているからこそ可能な仕組みだ。トヨタ自動車でも本社と同一賃金の海外採用者は現地法人の社長クラスだけ。ユニクロの当面のライバルであるGAPやH&M、ZARAなどの衣料製造小売業でも世界同一賃金を導入していない。もし実現すれば、画期的なことといえる」
※週刊ポスト2013年5月17日号