アベノミクスではインフレ率2%を目標として掲げているが、物価が上昇すれば金利も上昇するのが普通だ。気がかりなのが住宅ローンである。ファイナンシャル・プランナーの平野雅章氏が今後の住宅ローンの行方をシミュレーションする。
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住宅ローンには返済期間中の金利が固定される固定金利型と、半年ごとに金利が見直される変動金利型がある。また、これら2つの中間的なタイプとして固定金利選択型がある。3・5・10年などの一定期間は利率が変わらず、期間終了後は変動金利を選択するか、再度、一定期間の固定金利を選択する住宅ローンだ。
固定金利型や10年超の固定金利選択型の金利は、10年物国債の利回りに代表される長期金利の影響を受ける。
一方、変動金利型や固定期間の短い固定金利選択型の金利は、金融機関が優良企業に1年以内で貸し付ける金利である短期プライムレートのような短期金利に連動する。
まず心配されるのは、いわゆる「悪い金利上昇」が起こることだ。
「機動的な財政政策」で国債発行の増加に歯止めがかからないと市場に見られれば、国債金利は上昇して固定金利型の金利も上昇する。一方、変動金利型の金利は、短期金利に連動し、直接、国債利回りの上昇と連動するわけではないが、国債の信認低下は円への信認低下でもあり、為替では今以上に円安が進むことになり、その影響を受ける。
たとえば、日本は原油などのエネルギーや小麦などの食糧を輸入に頼っているが、円安になるとそれらの輸入価格は高くなり、物価上昇につながる。それが変動金利上昇の圧力となる。
次に、アベノミクスが機能し、景気回復局面になった場合はどうなるか。たとえば企業による設備投資などで資金需要が増加することにより「良い金利上昇」が起こるだろう。景気回復局面になれば、賃金の上昇も期待できる点で「悪い金利上昇」とは家計への影響度が異なると言える。
しかしながら、住宅ローン金利上昇による返済額の増加ほどには賃金が増えないケースがあり得る。いずれにしても、アベノミクスが失敗しても成功しても金利は上昇する可能性が高まっている。
※SAPIO2013年5月号