日本全国津々浦々、どこへ行っても必ず見かけるコインパーキング(無人の時間貸し駐車場)。いったいどのくらいの数があるかご存じだろうか。実際の供給台数は約700万台と推計されている。
それだけあれば、もう十分と思うかもしれないが、日本における乗用車の保有台数は約6000万台で、一般的な駐車需要は2400万台あると業界関係者は見ている。つまり、時間貸しとはいえ、まだまだ駐車場が足りていない状況なのだ。
コインパーキングの儲けのカラクリは、もちろん15~20分単位で利用者が支払う駐車料金が主な収益源となっている。業界首位は「Times 24th」と書かれた黄色い看板でお馴染みのパーク24で、約40万台の駐車スペースを持つ。駐車場事業(タイムズ)の売り上げだけで1114億円(2012年)を稼ぎ、3期連続最高益を更新中だ。
しかし、駐車場を設置するには、車止めの機器や精算機、看板などの初期コストがかかる。そして、何よりも空き地がなければ作れない。それらの仕組みはどうなっているのか。
「パーク24の場合、駐車場をつくる土地はすべて所有者から賃借しています。毎月、固定の賃料を支払い初期投資も同社が負担します。その代わり、駐車場収入はすべて売り上げに計上するシステムを築き上げました」(全国紙記者)
ちょうど同社がタイムズ事業に参入した1990年代前半は、都内にはバブル期に計画されたビルなどが建たずに利益を生まない“遊休地”が点在していた。そこに目をつけてどんなに小さな土地でも数多く調達し、まるで隙間を埋めるようにコインパーキングという付加価値をつけていった。実はここに同社の狙いがある。『月刊BOSS』主幹の関慎夫氏の解説。
「例えば、新宿の都庁周辺には都が運営する大型駐車場がありますが、ほとんどガラガラ。いくら大型の駐車場を1か所作っても、そこから都庁まで徒歩10分では意味がありません。それならば、4~5台しか停められない小さな土地でも近隣に駐車場をつくり、効率よく配置したほうが稼働率は高くなる。そのノウハウをパーク24は持っているのです。
また、狭い土地ならばマンションなどへの転用や再開発の可能性が低く、土地オーナーから解約を突き付けられる心配もない。みすみす儲かる場所を手放すリスクが減るのです」
さらに、大通りに面しているか否かなど場所によって細かく料金設定が違うのにも、別の意味が込められているという。
「常に満車になっていると『あそこはいつも停められないから……』と客離れを引き起こす要因になる。だから、常に1~2台の空きが出るように意図的に料金設定を変えています。今後はポイントカードの加入者などに予約サービスを始めるなんてこともあるかもしれません」(前出・関氏)
病院や商業施設の駐車場管理を一括して請け負ったり、駐車場を基点にしたカーシェリングサービスに力を入れたりと、さらなる付加価値づくりに余念のないパーク24。だが、拠点づくりの拡大スピードが鈍る懸念もある。
「景気回復で地価や賃料が上昇し続ければ、収益を圧迫する要因になりかねません。その点、業界2位の『三井のリパーク』は、三井不動産が母体なので土地の調達力に長けている。三井がどこまで陣地を広げてくるか、パーク24もウカウカはしていられないはずです」(関氏)
空き地さえあれば、自然に儲かる――と単純にいかないのが、駐車場ビジネスの難しさなのだ。