著書『リフレはヤバい』でアベノミクス批判を行なった小幡績氏(慶応義塾大学准教授)と、黒田東彦・日銀総裁の元同僚でもある志賀櫻氏(元財務省主計官・東京税関長)。経済政策を知り尽くした2人の財務省OBが、黒田日銀の金融政策に対して語りあった。
──財務省出身の黒田総裁を、財務省OBとしてどう見るか。
志賀:私は主税局の調査課や官房の調査企画課、国際局と、後輩の黒田氏とは3回一緒に仕事をしたことがあります。
小幡:私は入省の際、主税局の総務課長だった黒田さんが内々定の面接官で、酷く絞られました(笑い)。当時から黒田氏は知的な人として尊敬されていた。
志賀:ただ、彼には悪い癖があるんです。頭の良い少人数が政策を決めるのが一番いいとする「ハーベイロードの前提」というケインズの思想に立つ。大蔵省の主税局にいたとき、彼は、「何で多数が賛成した政策が政策として正しいのか」とはっきりいっていた。それに対して私は「あんたのいっていることは民主主義の否定じゃないか。俺はそれは許さん」といって口論になった。
小幡:ただ、結果的にクロダノミクスは大衆迎合的ですけどね。財務省では基本的にはみんなリフレ政策に反対で、黒田さんの考え方は異端と見られている。ただし一方で、財務省は基本的に日銀に対しては不信感をもっている。
志賀:昔は日銀をその所在地から「大蔵省常盤橋出張所」と呼んでいましたからね。日銀マンはピュアなエコノミストなので、とても政権の圧力に耐えられない。結局、政府と日銀の間に入って調整してきたのが財務省だったんです。
小幡:それがいまは機能していない。国債買い上げのクロダノミクスは明らかにやり過ぎで、財務省もかなり心配し始めている。特に国債の乱高下は本当に気が気じゃない。金利が上がったら日本は終わりで、消費税を上げるとかいう次元を超えていますから。
志賀:富裕層や大企業は資産を海外に脱出させて、大多数の国民だけがハイパーインフレに苦しむ。そんな時代がもうすぐやって来るかもしれません。
※週刊ポスト2013年5月17日号