「小さな葬儀」が増えているが、誤解やトラブルなどの落とし穴が潜んでいることも多い。
急病で夫を亡くしたAさんは、田舎に夫の菩提寺があり、代々の家の墓があることは知っていた。ただ、夫は一人っ子で、両親もすでに他界しており、遠方の寺の連絡先がすぐにわからなかった。「もし死んでも派手な葬式を出さないでくれ」と生前、夫がいっていたことを思い出し、葬儀社にいわれるまま、ごく近しい者だけで家族葬をあげた。葬儀社に紹介された僧侶に戒名もつけてもらった。
ところが、四十九日が過ぎ、納骨しようと遺骨を菩提寺に持っていったところ、住職から「戒名はうちの寺でつけるものだ。つけ直してお布施を納めてくれないと納骨はさせない」といわれた。
Aさんは納得がいかなかったが、戒名を授け直してもらい、お布施も再度納めて、ようやく納骨した。
「菩提寺のお墓に埋葬するのであれば、葬式を行なうに当たって戒名を授けたり、読経したりするのは、本来、菩提寺の住職の役目です。Aさんのように菩提寺に連絡も入れず、ほかで葬儀を行なってしまうと、菩提寺としての役割を果たしていませんし、お布施も得られない。そのため、後からこうしたトラブルが頻繁に起こるわけです。
普通は、葬儀社から『菩提寺はおありですか』と聞かれるはずです。ただし、良心的でない葬儀社の場合、紹介料ほしさに懇意にしている寺や僧侶を紹介することがあります。まずは菩提寺に連絡を入れ、葬儀の日程から相談することが大事です」(「日本エンディングサポート協会」理事長の佐々木悦子氏)
また、菩提寺とトラブルになりやすいのが、戒名や読経への布施の額だ。住職の「お布施はお気持ちで」という言葉を真に受けて3万円を包んだら、後で住職から「何かの間違いでしょう」といわれ、追加で30万円を支払ったなどという例は多い。
「お布施の相場も含め、菩提寺については親戚の中で長老的な立場の人にまず聞いてみること。身寄りがなければ地域の世話人的な立場の人でもいいでしょう」(同前)
※週刊ポスト2013年5月17日号