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ユニクロのブラック企業扱いに「個別企業批判しても仕方ない」

 ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長が、「世界どこでも仕事が同じなら賃金も同じにする」という世界統一賃金構想をぶちまけ話題となっている。ただ、そんな柳井氏の思いとは裏腹に、ユニクロはここ数年、社員を酷使する「ブラック企業」という批判にも晒されている。

 その根拠として挙げられるのが、離職率の高さだ。3年以内に離職した新卒入社社員は2007年入社組で37.9%、2008年では46.3%、2009年では53.0%、2010年では47.7%に上る。うつ病などの精神疾患にかかる社員も多く、休業者の42.9%が精神疾患を理由としている(2012年8月期)。

「スタッフとの人間関係が苦痛だった」

 そう語るのは、関東圏の店舗で約30人のスタッフを束ねていた元店長(30代)だ。

「20代の人間がいきなり店長として送り込まれるので、準社員やアルバイトをどうまとめたらいいかわからない。店舗では正社員だけがノルマを課され、ノルマのない販売スタッフとの温度差に頭を抱えてしまった」

 また、東海地域で働いていた元店長(30代)がいう。

「入社半年で店長代理試験があり、クリアすれば店長になる。閉店後や休日に時間を見つけては、1冊5cmはあるマニュアルを何冊も丸覚えした。ファイルは持ち出し不可なので、休日も店舗のバックヤードで勉強。そこにいれば、“手伝って”となり、結局はサービス残業です。さらに、店内の商品配置の知識から、レジ、フィッティング、ミシンの技術まで習得する必要がある。それでうつ病になって退社した同期もいる」

 しかし、ユニクロがそうした労働状況の改善に取り組んできたことも事実だ。柳井氏は離職率の高さについて「あまりにも促成栽培すぎた」と語る。新入社員の希望を考慮した人材配置や店長業務の見直し、社員が相談できる窓口を設けるなどの対策を講じてきた。 人事コンサルタントの城繁幸氏はこう指摘する。

「離職率の数字が一人歩きしているが、若者が保守的になる前、リーマンショック以前の2005年の統計を見ると、小売業の3年離職率は44.1%です。ユニクロが突出して高いわけではない。そもそも“ブラック企業”とは何か。本来ならば『労働基準法違反企業』といえばいいのに、ユニクロは労基法を遵守しているからそんな曖昧な言い方になる。問題があるとすれば日本型の労働、雇用慣行のほうであり、個別の企業を批判しても仕方がない」

※週刊ポスト2013年5月17日号

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