道州制が安倍晋三首相の肝いりで導入に向けて動き出した。道州制は地域経済の流れを変えることで、大きな地価変動をもたらすことになる。
道州制で地価上昇が期待される川崎市だが、すでに地価高騰は始まっている。3月に発表された東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の公示地価上昇率はトップ。そのなかでも特に発展著しいのが、東京の高級住宅街・田園調布と多摩川を挟んで向かい合う武蔵小杉駅周辺である。一部商業地の地価は昨年から10.5%増の12万円アップした。
武蔵小杉といえば、JR南武線、横須賀線、湘南新宿ラインや東急東横線が乗り入れており、渋谷にも横浜にも15分ほどで行けるなど交通の利便性は高かったものの、駅前は渋い飲み屋などが建ち並ぶ下町情緒あふれるイメージだった。
それがいまやどうだろう。駅前にはタワーマンションが次々建ち、4月にはのべ床面積1万平方メートルを誇る駅直結の大型ショッピングセンター「武蔵小杉東急スクエア」がオープンした。「駅前は常に開発が続いているから駅までの道がずっと仮設状態」(地域住民)という。
それにしてもなぜ、武蔵小杉がこれほどの再開発のターゲットになったのか。不動産コンサルタントの長嶋修氏がこう説明する。
「川崎市は武蔵小杉を『第三都心』にする構想を打ち出しており、それに開発業者が乗った。交通の便がよい上に、武蔵小杉はもともと企業の社宅や工場が多い街で、NECのグラウンド跡地や工場跡地など再開発の余地が多かったのも大きな要因です」
昨年、注目を集めた東京スカイツリーも、セメント工場の跡地に建設されている。都市の再開発ラッシュは、皮肉なことに日本の製造業の衰退と反比例しているのである。
※週刊ポスト2013年5月17日号