ナチュラルなファッションや暮らしを好む女性を“森ガール”と呼び始めたのが約5年前。続けて登山やトレッキングなどアウトドアを楽しむ女性が目立つようになり“山ガール”が出現した。そして今、旅行などのレジャーを楽しむ女性たちの関心は“島”へと向かっているという。
広島県は昨年、「瀬戸内 島tabi」と題した女性向けパンフレットを作成し、瀬戸内海の島々へつながるイメージを女性へ印象づけようとキャンペーンを行っている。島に着目したのは2011年度のこと。旅行雑誌「じゃらん」に調査を依頼し、広島についてのイメージ調査をお願いしたところ、瀬戸内の島々への認知度は低くとも、関心は高いという結果が得られた。特に首都圏と関西圏の20~30代の女性にその傾向が強く出た。
その後に実施されたモニターツアー後のアンケートでは、「瀬戸内・島サイクリングの旅」「島トレイル・ランニングの旅」、サイクリングもシーカヤックもコースに含まれる「アクティブ女子のための、とことん瀬戸内を満喫する旅」が満足度でトップ3を飾った。とくに島サイクリングの旅は、事前の期待度を満足度が大きく上回った。
「広島県ブランド推進コンセプト『瀬戸内ひろしま、宝島』を浸透させるため、限られた予算の中で効果的な施策をと、ターゲットを首都圏と関西圏の20~30代女性にしぼりました。この方たちは広島をあまり知らず興味もさほどないのですが、いったん魅力を知ると実際に行動して訪れる人たちです。他の一般顧客層への影響力も大きいので、女性向けのパンフレットを作成したり、新しい旅行商品の開発を促すなどしています」(広島県商工労働局観光課)
口コミやSNSなど、コミュニティやネットワークへの発信力が強い女性たちへのイメージアップをはかり、消費のボリュームゾーンであるシニア層やファミリー層へも“島旅”の楽しさを届けてもらおうというもくろみだ。
もっとはっきり島への旅と女性を結びつけているのは、伊豆諸島への船旅で知られる東海汽船だ。近年、島を訪れる若い女性グループが増えていることに着目し、アクティブに山や海、島を楽しむ彼女たちを「島ガール」と名づけ、2010年12月から各種のツアーを実施している。
「“島ガールツアー”を実施するようになってからは、弊社だけでは実現が難しい、テーマに合わせた体験型のツアーを他企業様とコラボレーションして実施する機会が増えました。また、女性にとって魅力的なツアーということで、これまでよりもメディアからの問い合わせが増えています」(東海汽船旅客部広報宣伝室)
2010年から実施された「島ガールツアー」の実績をみると、ブリジストンサイクルとの共同企画、OLYMPUSと合同でカメラ女子向けにフォトツアー、他にもダイビングやスノーケリングなど多種多様な企画が並ぶ。5月下旬には釣り具メーカーのDaiwa、山登りフリーペーパー『山歩みち』と合同で釣りと三原山裏砂漠を楽しむツアーが予定されているが、現在はキャンセル待ちの人気ぶりだ。
女性の間での島ブームは最初、沖縄の離島への旅から始まった。どん欲な女性たちは沖縄の島だけでは飽きたらず、他の島へも足を伸ばし始めた。どうやら、交通が不便な島へ渡ることは、新たな体験ができる魅力的なことと映っているようだ。伊豆諸島への観光客数は、離島ブームが起きた40年前をピークに減るばかりだったが、この数年は下げ止まりしたのではないかと見られている。“島ガール”が、離島経済を活性化しそうだ。