製造業に比べ、多くの拠点が必要な宅配便業界は食品、日用品などと同様に国際化が遅れている。これまで国内市場への展開だけで成長を継続できた“弊害”とも言えるかもしれない。
「ヤマトが本格的に国際化に着手したのは2010年。上海、シンガポール、香港、マレーシアで宅配事業を開始しました」(中村弘・ヤマト運輸グローバル事業推進部課長)
創業100周年にあたる2019年度に、ヤマトグループは営業収益2兆円を目標とし、その20%超(4000億円超)はアジアを中心とする海外事業で構成する計画だ。ちなみに2013年3月期の営業収益は1兆2830億円を見込む。国別構成比は公表されておらず、「海外はまだ一桁パーセント」(同社幹部)だという。
「日本では一日平均4万5000人のセールスドライバー(宅急便を集配するドライバー。SD)が動いていますが、アジア全体で同じく4000人が稼働する規模」(中村氏)といった段階だ。
同社がアジア展開を決めたのは、【1】中国の通販市場が2012年に約14兆円(前年比4割増)に達するなど急成長、【2】日本企業のアジア進出が増加、【3】TPPなどで自由貿易圏拡大が見込まれる、といった理由から。今後、物流のニーズは急激な拡大が見込まれるのに、アジアの現地配送業者は路上で仕分けを行なったり、扉を開けたままトラックを走らせたりとサービス品質が極端に悪い。そこにヤマト進出のチャンスがある。
「クール宅急便や代金引換サービスなども含めた宅急便の日本品質をアジアに広めたい。今後、日本の生鮮品が翌日に香港や台湾に届くようなサービスにもチャレンジします。間違いなく現地の食文化は変わるはずです」(中村氏)
※SAPIO2013年5月号